うさみ本棚

うさみの本棚です。おすすめされた本を読みますので、おすすめ教えてください!

佐野眞一さんの「渋沢家三代」を読んで。読書感想文。

渋沢家三代 (文春新書)

私、むかし埼玉県深谷市というところに住んでたんですよ。
たしかそのころ駅前には「渋沢栄一翁生誕の地」とかの横断幕がかかっていたような。
理系の学生だった私はそれを見て「誰?」と思っていたものでした。


その後いろいろなところで名前を見かけて、
どういう人なのかうっすら理解しました。
銀行とか会社とか作った人ね、と。
なんだか、つかみどころがない感じだったからうっすら理解になった。


この本を読んで、なんでうっすらしか理解できなかったかわかった。
実績残しすぎ。ここからは敬称略で失礼しますが、
栄一、いろいろやりすぎ。


あのね、栄一ってば若い頃、
幕府、ぶっつぶすつもりだったらしいの。
ガイジン、やっつけようと思ってたらしい。
とりあえず高崎城乗っ取って足掛かりにしようと相談していた。
でも、従兄が全力で止めたからやめたのね。


これが1863年のこと。
この時に実行しちゃってたら死んでたかもしれん。


で、その後いろいろあって、一橋さんとこの慶喜さんの部下になるのよ。
水戸の一橋家。
徳川御三家の。


ちょまちょまぶっ潰そうと思ってた先方やーん、と思いつつ、
いろいろあって。
んで、仕事できる人だからバリバリやってたら、
1867年のパリ万博にいく慶喜さんの弟のおともの一団に加わることになって、パリに行く。
いろいろあって。


もちろん当時のことだから船に乗って何日もかけて行くんだけど、
その時の日記によるとパンにバター塗ってベーコン食ったり魚鳥豚牛羊などの肉食べたり、
「食後にカッフヘェーという豆を煎じた湯を出す。砂糖と牛乳を混ぜて飲む。たいへん、胸をさわやかにする。」とか書いてある。


日本ではまだ池田屋事件ー!!とかやってるくらいの時期に、洋上でカッフヘェーうめえ。と。
その頃はお財布担当で。


んでフランスにいる間に雇い主の幕府無くなっちゃったりして、帰ることになって。
国に帰ってみたらこんどは頼まれて明治政府のお金刷ったり、大蔵省的な。官僚になっちゃったりして。
いろいろあって。


こないだまでは幕府のボスのお財布担当だったけど、今度は明治政府のお財布担当やっちゃうよっ!つって。
(実際には言ってません)。
まあ、いろいろあって。


と思えば政府きっついわーって辞める、と思えば、
第一国立銀行やら商工会議所やら証券取引所作っちゃって。
あとは福祉系のとか大学何個かとか作ったり。
企業も500個くらい作っちゃったりとか。
なんでって、いろいろあって。


岩崎弥太郎さんとかと比べるとまあ欲がなくて、お金儲けをしていない。
もちろんそれなりにイイ暮らしはしてるんだけど。

「世界を良くしたい欲」が強くて私利私欲がなくて、経歴的には大金ボロ儲けしててもおかしくないのにそれをしない。


偉人。まさに偉人。


あ、んで、息子が人からは愛されてたけどわりと放蕩息子で頭を悩ませたり、
孫が継ぐかと思えば研究に勤しみすぎて財産使い果たしたり、とか。
そんな三代でした。


そこまで含めて愛せる三代。
発展途上の一国に1人はほしい人、そんな人です渋沢栄一


**どんな本かといいますと
上記のは骨格部分というかごく一部で、
こんな一家のドタバタコメディかっていうくらいの奮闘記です。
ドラマティックがとまりません。
まんがみたいな人たちです渋沢家。


実家が藍玉と養蚕の図太い農家で、
そろばん弾きまくって幕府で役に立つ。他国にも渡る。
農民から武士になって幕臣になって官僚になって起業家になって、という各パートに全て過去の経験がいきている。



いや、これ過去の経験だけでこんなにすごいことになる?
宇宙人説とか過去に転生した未来人説とかあるよ。
それなら理解できるなー
「官僚が転生したら幕末の農家の息子になったからちょっと経済を近代化してみた件」
とかだよきっとこの人。


**こんな人に読んでほしい本でした
渋沢栄一について知りたい
・日本の幕末前後あたりのおもろい本が読みたい
・武士武士してない歴史が知りたい
・「なんで超優秀な親の元でいまいっちょな子が…」みたいなことを思ったことがある

巽好幸さんの「美食地質学入門」と、稲垣栄洋さんの「世界史を大きく動かした植物」を立て続けに読んで。読書感想文。

「美食地質学」入門~和食と日本列島の素敵な関係~ (光文社新書)

世界史を大きく動かした植物

たまたま順番に読んだ2冊の本が、
それぞれ「日本の地理と食べ物」と「世界の歴史と食べ物」みたいな話だったんですよ。


美食地質学の方は、「私はマグマ学者である」って言う書き出しが印象的。
地球ができて46億年、日本列島ができたのが6億年前くらいらしいけど、その成り立ちや地殻・火山の話をして、そこから食べ物の話になる。


「餌が豊富な環境で、運動をたくさんして元気に育った生き物はおいしい」
「栄養豊富で清い土地で育った作物はおいしい」
みたいな前提に基づいていろいろな食べ物を語る語る語る。


瀬戸内海は広いところと狭く深いところの繰り返しがおいしい海の幸を育てている、とか、なぜそんな地形になったかとか。
日本海はもともと海ではなく、湖状の場所が外海と繋がってできている、カニが美味しくなったのは云々。


山脈沿いに蕎麦の美味しいところが多いのは海と山が近い地形で雨も多く水が磨かれて云々。
稲作をするために必要な水が豊富に供給されているのは山があるおかげで、それはプレートの活動が云々。


超たのしい。
この人と和食屋さんに行ってみたくなるでしょ?
うんちくがうるさそうだから嫌な人もいるかも?


で、これと同じくらいのタイミングで読んだのが
「世界史を大きく動かした植物」です。


コムギ、イネ、コショウ、トウガラシ、ジャガイモ、トマト、ワタ、チャ、サトウキビ、ダイズ、タマネギ、チューリップ、トウモロコシ、サクラ。
の14種類が「世界史を大きく動かした植物」として紹介されてます。


おもしろかったのが、コムギとイネの比較。
小麦を育てる畑は毎年毎年小麦を育てられないんですって。
畑が痩せてしまうから、年によって他の作物や野菜を育てて、畑が元気になったらまた小麦を育てる。
ヨーロッパあたりは広い土地があったからよかったけど、農作できる土地がすくなかったらきびしいよね。


それに対して日本の稲作は、山から川や地下水として田んぼに栄養が運ばれるから連作できる。
さらに、そもそも一粒のたねもみから取れる量が
米は10〜20倍で、麦は3〜4倍と、米のほうが3〜5倍くらい多いんだそうです。
麦は育てるために広い土地が必要になるけど、
米を水田で育てる方法はとても優れいてた。と。


でも、水が潤沢に必要だし、小麦よりも気象の影響も受けやすいから、どこでも育てられるものでもない。
地形的に雨が降りやすくて、地下水や川がいい感じに流れてないと作りにくい。


他にも、トマト、ジャガイモ、トウモロコシが海を渡って世界に行き渡る話もおもしろかった。
イタリア料理やインド料理はトマトを使うけど、昔はそれぞれの国にはなかった話とか。


18世紀まではイタリアにトマトはないんです。
イタリア伝統のトマトソースは1,700年よりも前にはなかったのかー、と思うとわりと最近な気もする。
果たして伝統とはいったいなんなのか。


そんなこんなな食糧的事情が、それぞれの国の文化や政治を作ってたりするのがおもろいよね。
あと、安定して食べ物が手に入っちゃうと色々な試行錯誤がされないので、人が狡賢くならないのかもなー、というのもアレです。


トウモロコシ、トマト、ジャガイモ、カボチャあたりはどれも南米原産だそうで、新大陸アメリカからヨーロッパにもたらされて世界中に広まったらしいのだけど。
新大陸の文明が滅ぼされてヨーロッパからの文化が逆輸入されてるのも不思議。


今は世界中で色々なものが作られるし食べられるけど、世界史上はまだ場所が限られてたのが面白いんだね。
その後流通が変わってどこでもなんでも運べるようになる。
すごい世の中だよね。


カレーライスが食べられるのは文明の発展のおかげです。
ありがたやありがたや。


**こんな人に読んでほしい本でした
・社会の授業が好きだった人
・食べ物の話の本が好きな人
・普段触れないけど身近な話に触れたい人

言葉にできない想いは本当にあるのか を読んで。読書感想文。

言葉にできない想いは本当にあるのか (単行本)

生きているといろんな場面で気になる言葉ってあるじゃないっすか。
誰々さんが言ったあの言葉とか、
なにかの本に書いてあったこととか、
ラジオから流れたあの話とか。



そんなのってすぐに目の前から流れて行ってしまうのだけど、
いつもよくよく考えてるひ人は、その言葉から発想を広げていく。
流れていくのをわざわざ拾い上げて見つめて見つめて見つめる。
それを文章にまとめたような本です。

 


そんな話を読むのはとても面白い。
それはそれは面白い。
何かのことを大好きな人からその「大好きなもの・こと」の話を聞くのが超面白いように。

 


で、この本はバンドマンとしてデビューして、その後作詞家・音楽プロデューサーとして活躍している
いしわたり淳治さんという人が書いた本です。

 


言葉について日常的に考えている人が、日々の中で触れた言葉について思ったことを書いている。

 


ものの見方が違う。
ものを見る角度も違うし、ものを見る深さも違う。
私が256色の平面で世界を把握してるのに、
すごい人は3Dスキャナーで全方位をリアルタイム分析しながら見た上にレントゲンと心電図も撮っているくらい深く見ている。

 


たとえば一番最初の文は瑛人さんというシンガーソングライターの「香水」と言う曲の話。
あれあれ、あのドルチェアンドガッバーナのやつ
ついつい「どーるちぇあーんどがっばーなーのあの」のとこがテンポ良くて歌いたくなるよねーみたいなことを言いたくなるけど、
いしわたり先生は「五感のどれに作用するか」みたいなことに注目する。

 


視覚83%、聴覚11%、嗅覚3.5%、触覚1.5%、味覚は1%
と言うのが人間の知覚の割合、というたまに聞く研究結果があるけど、この曲は「香水」が嗅覚を刺激するし、「ドルチェアンドガッバーナ」が聴覚を刺激するワードで、それがこの曲を特別なものに変えている、とか。

 


「フィクションで歌詞を作る人には視覚中心のものが多いけど、実体験に基づく歌詞作りをする人には視覚以外が多い」みたいな話もとても興味深い。
見てきたような話、というのは作れるけど、
嗅いだような、触ったような、聴いたような話ってのは難しいのかもね。

 


**どんな本ですか?
日常的に言葉のことばっかり考えている作詞家が、
日々気がついたことを書いた連載をまとめた本です。

 


**こんな人におすすめしたい本です
・言葉に興味がある人
・言葉に興味がある人に興味がある人
・歌詞づくりのセンスみたいなものを学びたい人
・日々言葉を使う人

 

ちなみにネットの連載をまとめた本なので、

実はオリジナルがここ大ヒット中の瑛人『香水』 ポイントは嗅覚と聴覚を刺激する歌詞? | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]にあったりする

プロジェクト・ヘイル・メアリーを読んで。読書感想文をネタバレなるべく無しで書く挑戦。

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上

実は、これの読書感想文を書く前に、書かないといけない読み切った本がたまっているのですが、先にこの本のことを書きます。
それくらい印象的でした。

 

 

ぜひ皆さんにも、読んでほしい

面白いから!

SF読まない人にも小説読まない人にもぜひ読んでほしい。

 

 

SF小説です。
著者はアンディ・ウィアーさん。


前に「火星の人」という小説を書いて映画化されて、
「オデッセイ」という邦題がついて、
というと「ああ、その映画の人?」と思われる方もいるかもしれません。
火星でジャガイモ育てるやつね。


今度はどこで何を育てるか、というと、ですよ、
これはネタバレになるので内緒です!
言いたいー!
そもそも育てるんかいな!


ちょっと待って。
これ、ネタバレ無しで読書感想文書くの無理じゃない?
読了済みの方と是非お話ししたい!


ええと、私、この小説大好きです。
これのちょっと前に三体という中国のSF小説を読んで、
そっちも超大好きなんですが、
こっちも超大好き。しかも違う方向性の大好き。


三体が超豪華電脳満漢全席中国料理祝宴午餐美味美味!
だとしたら、
プロジェクト・ヘイル・メアリーは "Double cheeseburgers with fries and coke" です。
え?満漢全席の勝利じゃね?と思った人。
違うでしょー、人生の終わりに食べたいのどっちよー。
いや、人生の終わりにそんな脂っこいもん食いたくないわ、
という方はごめんなさい。


あ、ちなみに南極点のピアピア動画、というのも大好きなんですが、
こっちはね、街中華の焼肉定食的おもしろさです。
キャベツの千切りのはじっこにマヨネーズがドーン!
たまねぎと炒めた甘辛ぶたばらとごはんが最&高!的な。
黄色いたくわん!的なね。


**どんな本なの?
ネタバレと言われなさそうな範囲で書くと、
人類滅亡の危機と戦う人たちの話です。
人類ももちろん他の地球上の生き物も滅亡するような状況になってしまって、
それと戦うために主人公が奮闘しまくります。
異世界に転生したり過去に回帰したりはしません。
巨大ロボも出てきません。


主人公が魅力的なんです。


人間臭くて、
ちょっと情けないくらいの性格。
だけど滅亡する人類を救う旅の途中にいる。
不満たらたらで、どうして僕が、と思ってる。


ミステリー小説好きな人にお伝えすると、
パーネル・ホールさんの書いた探偵スタンリー・ヘイスティングスシリーズの主人公
スタンリー・ヘイスティングスみたいな性格です。


スタンリー・ヘイスティングスを知らない人のためにちょっと紹介すると、
・俳優になりたかったけどなれなかった
・その後小説家を目指したけどなれなかった
・やがて私立探偵になったけど、私立探偵というか保険の調査員で、誰かがケガした階段の段差の写真を撮る仕事をしたりしてる
・明らかに手に余る事件になぜか巻き込まれる
・解決に向けて奮闘する
・控え目かつお人よし、ふつうの人
・事件解決は主人公のわりにあまりしなくて、警察がふつうに解決したりする
という探偵小説なんですよ
超面白いのでミステリー好きな方はぜひ!



じゃなくて、
プロジェクト・ヘイル・メアリーの話ね。
主人公がスタンリー・ヘイスティングスみたいな人なんですよ。
才能はあるけど、控え目で、前に出るのが嫌いで、暴力も嫌いで、お人よしで、
問題解決に向けて戦う主人公!
というようりは、「主人公にヒントを与える白衣の科学者役」みたいな人。


なのに世界を滅亡から救う主人公なの!
かわいそうでしょ?
屈強な軍人とか、鋼の意思の宇宙飛行士とか、実は宇宙人と地球人のハーフの超能力者とかがやる役でしょ!
でも地球の命運が彼の双肩にかかっちゃってるんですよ。


地球を救いに行った主人公と、
地球を救いに行く前の主人公の、
スイッチバック方式で物語が進んでいきます。
あー!
これ以上書くとやばーい!
確実にネタバレする。
ので、各自、読んでくださいね。


これはほんとね、
三体に対する欧米文明からのアンサーソングみたいな一冊です。
ぜひ。


**こんな人に読んでほしい本でした。
・SFが好きな人
・かっこよくない主人公が奮闘する話が好きな人
・ディザスタームービー好きな人
・上下巻くらいある重めな本を読みたい人

「ブルシットジョブ クソどうでもいい仕事の理論」を読んで、読書感想文

ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論

 

表面化してないけど確かにある社会問題として
「誰の何の役にも立ってなくて本人もそう認識してる仕事」
っていうのがあるよね、という本でした。
対策としてはベーシックインカムによってブルシットジョブを減らせると思うよこれは政策提言とかじゃないんだけど。
という結論。

 


社会問題だから社会として問題解決、ベーシックインカム
という話はわからなくもないんだけど、個人レベルでできる話もしてよね、という気がせんでもない。
まあ、「ベーシックインカムがあれば仕事と報酬を切り離せる」という理論はわからなくないけども。

 


おそらく今まさにブルシットジョブしている個人個人が
ブルシットジョブから抜け出したとしても、
次の別な誰かがブルシットジョブをし始めてしまうからなんだろうね。
悲しいことに。

 


私は、自動化とコミュニケーションの改善が、
世の中をちょっとずつ幸せにする方法だと思ってるのだけど、
右から左に物を移して、その後左から右に物を移すだけの仕事もたくさんあることを知っている。

 


エクセルから別なエクセルにコピペするだけで日に何時間も使ってる人とかね。
その作業の結果が誰かを救う物なら良いのだけど、あまり世のため人のためにならないならと思うと、
「そもそも自動化する必要あるの?」
という話にもなるし、
もちろんそれに関するコミュニケーションの改善も必要よね、

 


私は以前、
ものすごく仕事に対するやる気が持てない時期があって、
そのとき「この仕事を一生やるのと、一生某有名テーマパークでポップコーンを作るのとどっちがいいか」
みたいな話をしておりました。

 


そのときやる気が持てなかった理由は今思うと
「誰の何の役にも立ってないのでは?」という気持ちもあったのかも。
と思います。
実際は誰かの何かのお役に立ててたかもしれないけどね。

 


**どんな本でした?
ブルシットジョブとは何か、
どんな害があるものか、
なぜ増えるのか、
何をしうるのか、
みたいなことが書いてある本です。

 


ざっと読んでおくと、
自分や周りの人がブルシットジョブ100%状態になってないか気にすることができるようになるかと思います

 


**こんな人におすすめしたい本でした
・経営者
・政治家
・自分の仕事は誰の何の役にも立たないのでは?と思う人
・自分は人にやる気の出ない仕事をさせてないかと思う人

小島英揮さんの「ビジネスも人生もグロースさせるコミュニティマーケティング」を読んで。読書感想文。

ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング

コミュニティマーケティングの本で何読む?と言われたら、候補に必ず入るのがこの本です。
料理する人に「料理の四面体」を勧めたり、
投資を始める人に「エンデの遺言」を勧めたり、
マーケティングを始める人に「ノヤン先生のマーケティング学」を勧めたり、
マンガを描き始める人に「ヘタッピまんが道場」をお勧めするようにお勧め
したい。


小島さんは日本のAWSのコミュニティ「JAWS-UG」の立ち上げと成長に深く深く貢献した人。
この本にはそんな小島さんがAWSだけでなく、その後に関わったいろいろなコミュニティから得た知見やコツがまとめてある。


あ、ちなみに「貢献した」と書いてるのは、途中からの成長はもう自走してどんどん大きくなっていたと言う認識だから。
ここポイント。コミュニティは「作った人が大きくする」のは途中までで、求心力のあるテーマの元に人が集まって大きくなるものだからね。


そうそう、脇道にそれるけど、
私の家には男の子が二人いて、ふたりともサッカーチームに所属してサッカーをやっている。
で、あるコーチがどこかで話をしていて印象的だったことがある。


ブラジルでサッカーが盛んなのは、
こどものころからみんなサッカーが大好きで、
おとなになってもサッカーが大好きなんだって。
これだけ書くとなんかバカみたいなんだけど、
いくつかの要素が混ざっている話なんです。


まず、サッカーが大好きなこどもが育つ環境がある。
これは立派な運動場や、道具の話じゃなくて、
お兄ちゃん達がみんなサッカー大好きだからそのへんでサッカーをしていて、とにかくサッカーが楽しい、という状況。
その環境で楽しくサッカーしているこどもたちが大人になると、
「サッカー大好きなまま大きくなった大人達」
が大量生産される。


スタジアムは人であふれる。こどものサッカーに寛容な文化が形成される。
一部の優秀なサッカープレイヤーがヒーローになるんだけど、その影にはたくさんの「サッカー好きな大人」がいて、サッカー界を支える。
競技人口が多いから強い選手が生まれる。


楽しいから一生の趣味になっちゃう。


んで元の話にやっと戻りますが、
コミュニティマーケティングの話です。
コミュニティ、すなわちなにかしらの目的や共通点のある人々の集まり。
です。
んで、それを商売にも活かそう、というのがコミュニティマーケティング


そういう意味では上に書いた「ブラジルのサッカー好きな皆さん」というのは、実はサッカーコミュニティなんだなー、と思ったのよ。
巨大すぎてそんな気がしないけども。


例えば同じバーの常連さんの集まりもコミュニティ。
テレビ東京さんの視聴者コミュニティもコミュニティ、
パン好きのコミュニティとか、チョコ好きのコミュニティなんかもある。


私が仕事で関わっているDMS Cubeは
HULFTやDataSpiderといったセゾン情報システムズ製品のコミュニティ。
SalesforceのTrailblazers Communityは Salesforce製品のコミュニティ。
小島さんが立ち上げたJAWSAWSのコミュニティ。


このへんはユーザーコミュニティですよね。
同じ製品を使っている人同士が集まって、
よりよい活用方法をさがしたり、情報交換をしたり。
RPGのギルドっぽいよなー、と思ったりもする。


どうせ人が集まるなら、効率よく(ローコストハイゲインに)運営したい、というのが企業側の本音であって、
そんな思いがあると、再現性のあるメソッドが確立される。
要するに上手な方法が編み出されていく。


ふつうは「お金でもあげないと、御社の商品を売るのの手伝いなんてユーザーさんはしてくれないんじゃないの?」と思うけど、
金銭的でないインセンティブがあれば人は動くんですよ。
そしてそのインセンティブは例えば
「楽しい」とか「その界隈で有名になれる」とかでも十分。というかそっちがお金を上回る場合が往々にしてある。


そりゃそうですよね。
社内では孤独に働いて、月数万円のお小遣いをやりくりする人が、いつもの仕事を外で話したら
「なんですかその話超すごいもっと教えて!」と言われたりするんだもの。
そして、今の世の中は一人の知識を拡散する方法がいくらでもあるんだもの。


世の中全体がコミュニティマーケティングを押し進めているみたいな状況です。


子供のころは学校に行けば勉強を教えてくれるけど、
大人になってからは自分で学ばないといけない。

昔は選択肢として、
大学にでも入りなおすか、
通信講座に申し込むか、
師匠を見つけて弟子になるか、
本を読むか、といったところでした。
あ、ビデオとかDVDとかもあるね。

そこに今、
テクノロジーの進化に伴い手段が増えているんですよ。


YouTubeで動画を見るのもそうだし、
Twitterでも、詳しい人に質問すると答えてくれることもある。
UdemyとかTEDとか個人にお金を払って学ぶ方法だってある。

んで、
コミュニティに所属して、
オフラインでもオンラインでもイベントや
QAができる場所で質問するのも一つ。

この「コミュニティに所属する」というのが、
仕組み上のコミュニティと人間関係のコミュニティで分かれていることを
意識する必要があるなー、と最近思います。


詳しい人に聞く、行動する、自分も詳しくなる、
自分が得た知識を他の人に共有する。
レーダーチャート的6角形でとがった部分を回りの人に共有する。
遠くても時間の制約があっても、
ZoomだDiscordだなんだかんだで共有できる。


「自分より詳しい人に教えてもらう」という点においては、
昔も今も変わらない。
熊さん八っつぁんがご隠居さんに聞くよりもっと前、
洞窟で長老に話を聞いてるくらいから。


この「教えてもらう方法」の
手段が増えまくっているのが素晴らしい。
紙ができて、ネットができて、blogができて、YouTubeができて、Zoomができて。
詳しい人に教えてもらいやすくなった世の中に生きていて、
怖がらずに学ばないともったいない。

で、どんな本なの?

著者の小島さんはAWSの日本1号社員で、
米国AWSもセルフサービスで育ってきている背景があるし、手も足りないから営業よりもコミュニティ育成をして、
互助的にAWSユーザーが育つ仕組みを作った、という人です。
その後はCMC_Meetupというコミュニティを育成するコミュニティを作って活動している。


人にたくさん会って熱量の高い人(いわゆるファーストピン)を見つけたり、
ミートアップを企画して人と人とを繋げていく、
「輪」をどんどん大きく動きが進む。
熱量の高い中心人物たちを中心に、さらに多くの人が集まって育っていく。
製品の利用は促進され、さらに多くのユーザーが以下略。


趣味や興味の集まりと違って、
仕事関係のコミュニティは自然に盛り上がりにくいから
森を育てるように手を入れる必要がある。
その手入れの仕方を教えてくれる本。


この本は、小島さんがコミュニティについて学び、実践したことをまとめた本です。
コミュニティマーケティングを学ぶ入口としてふさわしい本なので、コミュニティマーケティングに関わる人にもそうでない人にもおすすめしたい本。


MAツール(マーケティングオートメーションツール)の話をする時に私がよくする話として
「メールやらなにやらを送る側としての話だけじゃなくて、受け手として自分はこんな世の中に生きていると知らないといけない」という話があるのだけど、
コミュニティ関係の話も今の世の中を生きるなら知っておくべき話だと思う。
効率よく楽しく学べて、仲間も見つかるから。

こんな人に読んでほしい本でした

・学びが欲しい人
・インプットをしたい人
・アウトプットをしたい人
・コミュニティに関わってるけど、全貌見えないなーという人
・なんで大人には学校ないんだろうね、という人
・コミュニティってよく聞くけど、何?という人


小島さんのtwitterアカウントはこちら
https://twitter.com/hide69oz
最近はCMC_meetupという活動でコミュニティ活用を進めております

稲田俊輔さんの「人気飲食チェーンの本当の凄さがわかる本」を読んで。読書感想文。

人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本

稲田俊輔さんは何店舗もあるスパイス料理店の「エリックサウス」を作った人、というのが最初の認識だったのだけど
最近の肩書きは、飲食店プロデューサーになっていることが多い。また、飲食に関する書籍もいろいろ出している。


たぶん、提供する側としても、食べる側にしても、
愛、こだわり、執着、思索の深さ、といったものが尋常じゃなくある人なんだなー、という印象。


エリックサウスがカレーやさんだから、スパイシーな料理が主戦場かと言えばそんなこともなく、
色々な料理が好き、というか、
食べること、食べさせることが好きで、その中で多様性のあるカレーを選んだ。っていう印象がある。


そう言う点では、「ラーメン王」なんて呼び名のある石神秀幸さんとも似ている。
石神さんはたまたまラーメンをメインテーマに活動しているけど、
若かりし頃からいろんなジャンルの飲食店を振り幅広く食べ歩いてたりするんだよね。


で、この本。
人気飲食チェーンの本当の凄さがわかる本です。


これはね。
外食する人なら一回読んでもいい本かもしれない。
サイゼリヤとか、ロイヤルホストとか、そのへんにある飲食チェーン店の楽しみ方を提案してくれる本です。


例えばサイゼリヤのメニューからコース仕立てに楽しむ方法。
熟成ミラノサラミにオリーブオイルかけてミニフィセルでパニーニにして、とか
(これはtwitterでおなじみイタリア人のマッシさんもやってるね)、
青豆の温サラダにトッピングの粉チーズをもりもりかけて、オリーブオイルと黒胡椒をかけて混ぜて、とか、
料理に薄切りペコリーノチーズを乗せて、とか。


おいしそうでしょ?
試してみたいでしょ?
試してみましょうよ。


※※どんな本ですか?
「チェーンだからこその安価にいい食材を提供するレストランで、
 一般的にウケのいい料理から一歩踏み込んで追加の味付けをし、
 再構成してより自分好みの味にしようぜ」
「ここの飲食チェーンは利益を追求しながらも、
 こんなこだわりを持っているから、
 それに最大限応える食べ方をしようぜ」
といった提案をしてくれる本です。


料理人であり、コンサルタントであり、経営者でもあるから生まれる視点なんだろうけど、
コストと味の両面を踏まえた提案になってるんだよね。
根底にあるのは料理人と食べ手のコミュニケーションなんじゃないかしら。
出題と回答、みたいな。


牛丼屋さんで紅しょうが大量に乗っけたり、
たまごに焼き肉のたれ入れたりするのって楽しいじゃないですか。
あれのもっときょくたんな楽しみかた。
試してみるのはいかがでしょうか


※※こんな人に読んでほしい本でした
サイゼリヤが好き
ロイヤルホストが好き
・食べることが好き
・外食は必要だからしてるけど楽しんではいない
・「コスパがいい」という言葉が好き
・こだわりとか言われるとめんどくさそうだけど、おいしいものは好き
・個人経営のレストランとチェーンのレストランを比べたら、ぜったいに個人経営のほうがいいと思う