とっくに読んだ人には「あー、読んだ?」って言われると思う。
主題も描き方も「そんな小説の書き方ってあったの!」って言う本。
素材も調理方法も新しい料理なのに、しっかり奥行きがあっておいしい!
って言うような本。
どんな本?
まわりくどく核心部分を避けて書くと、
社会問題になるようなマイノリティの人々が、
こどもから大人になるまでを追ったストーリー。
成長するまで自分達が何者なのか知らず、
知ったところでその運命を変えることができない、
というようなストーリー。
前に読んだ同じ作者の「日の名残り」は「後悔」の話だったと思ってるんだけど、
こっちは「虚無」の話でした。
なのに心をぐわんぐわん揺さぶるし、
社会性もむっちゃっくっちゃある。
なんでかしらーと思うと、
特殊なテーマとか精密な描写をするテクニックを使っているものの
描いているのは「人の心」だからじゃないかしら。
ちょっとした違和感の描き方とかむちゃくちゃするどい。
目で演技する役者みたいな描写。
こんな人に読んで欲しい本でした
人と関わりあう仕事をしている人で、
まだ読んでない人に読んで欲しい。
そして感想を聞きたい。
文学って言うほど肩肘張ってないので、
気楽に読んでいいと思います。
ちなみにこの本を読んでる時に想像もしないところからネタバレされそうになったけど、
ネタバレされても問題ないくらいの「先が読めているのに感動できる」っていうお話でした。
2005年にこんな本が出てたのかー。
10年前。
その頃から小説を読まないようにしてたから、
もったいないことしたな、という思いと、
これから読めばいいや、という思いがある。
たぶん世の中にはもう一生かけてもすべて読めない本がある。
そして確実に世の中のすべての人には一生かけても会えないし、
すべての人と理解しあうなんてとてもできない。
本が好きだから本を読むし、
人が好きだから本を読む。
いろんな人に触れたいから本を読んでるんだよな。
ああ、いい読書でした。