うさみ本棚

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西加奈子さんの「あおい」を読んで。読書感想文。

あおい (小学館文庫)

西加奈子さんは、好奇心旺盛なこどものような奔放な語り手でありつつ、
熟練の作詞家のような言葉選びをする、
とても素晴らしい作家さんです。


というのが、読後の感想です。
ちなみにまだこの「あおい」一冊しか読んでいない。


あ、ちがう、この前に
「ダイオウイカは知らないでしょう」を読みました。
西加奈子さんとせきしろさんが短歌を作った本。
あれを読んで興味を持って、本職の方も読みたくなったのだった。


せきしろさんの凪を感じるような短歌もすばらしかったんですが、西さんの短歌の密度とか厚みみたいなものがものすごかった。
何かしら言う時
「すごくたくさんのことが言いたいのに我慢して絞り込んで話す人」っているよなーと思うんです。
その、狭いところに閉じ込めた気体みたいな温度と密度の高さ。


んで、この西さんの場合はその熱が高いのと、
表現とか文章が、なんというか、なんというか、レベル高い。
一見荒く見えるんですよ。
でも、離れて見ると荒々しいタッチなのに、
実は何回も何回も繊細に絵の具を塗り重ねた絵のような物語。


「え!?そこ軸にしないの!?」
っていうようなできごとをあえてスパイス程度に使って、
スピードを落とすことなくグイグイとストーリーを進めていく。


人生において過去の事件なんて、
過去のこと、過去のできごとと本人は割り切ってるんだけど、
それが後の人生や人格に大きく作用する。
そんなことをうまく表現できる、時間の使い方がすごくうまい作家さんなんだと思います。


たぶん西さんが「ももたろう」をリライトしたら、
「ももたろうが家に来る前のおじいさんおばあさんの感情」とか
「退治される鬼が都を襲った後の気持ち」
みたいなことまで描ききると思う。
しかも2行で。


短い文章で奥行きが生まれて、
物語のテーマが「勧善懲悪」から「命」に変わるような、
そんな書き方のできる方なんじゃないかなー、と思います。

こんな人に読んでほしい本でした

・物語を読みたい!
・リアルな感じの小説が読みたい!
・現実離れしていない小説が読みたい!
・ずっとキラキラしすぎてないけど時々輝くような小説が読みたい!
・ロマンスじゃないラブが読みたい!