うさみ本棚

うさみの本棚です。おすすめされた本を読みますので、おすすめ教えてください!

森博嗣さんの「Wシリーズ」を読み終わった話。魔法の色を知っているか?、風は青海を渡るのか?、デボラ、眠っているのか?、私たちは生きているのか?、青白く輝く月を見たか?、ペガサスの解は虚栄か?、血か、死か、無か?、天空の矢はどこへ?、人間のように泣いたのか?を順番に読みました。

Wシリーズ 全10冊合本版 (講談社タイガ)


一作目の「彼女は一人で歩くのか?」を読んだのは2018年のことだったようです。
森博嗣さんの、「彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?」を読んで。読書感想文 - うさみ本棚
そこから2年くらい経って、続きを読み始めたら一気読みしてしまいました。
楽しかった。


人工知能スーパーコンピューター(っていうかスーパコンピュータ)が戦ったり、
人造人間と人間の区別がつきにくくなったり、
人間があんまり死ななくなってたり、
一部機械の体な人もいたり、
っていうくらいの未来の話。


未来の話だけど
コーヒーを飲むシーンがたくさん出てきたり、
変な性格の研究者がいっぱい出てきたり、
なんというか今の地続き感が強くてよい。


この文章「たりたり」言い過ぎ?だいじょうぶ?


舞台は日本チベットフランスエジプト他他他。
陸海空といろんなところに行きます。


作品ごとに舞台が変わり、テーマも変わり、登場人物も増えていく。
おおよそのんびりしてるのに突然超スピーディーな展開が出てきたり、
緩急使い分けがうまくてグイグイ読んでしまった。

どんな本ですか?

工学博士でもある著者が、
これの前にあるシリーズと同じ世界の未来を描いた話。
主人公は飄々とした研究者で、
同じ研究者やボディガード的な人々といっしょに、
次々に現れる謎を解決する。


知能とは、人間とは、みたいなテーマを持ちつつ、
軽いタッチで書かれてるのですいすい読める。
装飾が少ないザクザクした文体もとても好感が持てる。
ヘミングウェイくらいザクザクしてる。


洗練されすぎて無機質に感じられる人間や、
人間以上に人間っぽさがある人工知能とか、
大怪我しても死なない医療とか、
こんな未来があったらスゴイし、ないとは言い切れない、という未来感。


ちなみに、他のシリーズを先に読んでからこっちに進んだほうが良い、
という話もあるっぽいんだけど、このシリーズからなぜか先に読んでしまいました。
残りもそのうち読まねば。
でもこの次はおれ三体III読むんだー。


あ、そうそう、
三体シリーズがハリウッドと香港共同制作の超大作映画だとしたら、
こっちは日本映画っぽい要素もあるな、という印象もあるかも。
なんというか、ほのぼの感とか、イイ感じの間があったり、登場人物の脈拍が高すぎない感じからそう思うのかも。

こんな人に読んでほしい本でした

・SF好き
人工知能とかの未来が気になる

「Microsoft 再始動する最強企業」を読んで。読書感想文

マイクロソフト 再始動する最強企業
これ、すごくいい本だった。


Microsoftさんとのお付き合いは、
たぶんWindows95が世に出るよりもちょっと前、
Win3.1くらいのころなんじゃないかと思います。
それ以来ずーっと公私に渡りお付き合いが続いている。


Windowsはないとなにも始まらないし、
Officeは毎日のように使うし、
Office365を全社で使ってたし、
Power Automateで自動化しはじめたし、
Surfaceは自宅に一枚あるし。


昔から、あんまりイケてる印象がなかった。
「OSとか売ってる気が利かない巨大帝国」
くらいに思っていた。
だって実際よく止まるし、調子悪くなるし。


ところが最近なんだか違う。
OSとビジネスアプリの会社だと思ってたら、
ハードウェアが洗練されてきてるし、
セキュリティ周りやら自動化周りやら、
いろんなことに手を出しているし、
全方位でいろんなところと競合したりコラボしたりしてるし。


昨日の敵は今日の友。
いっしょにフリーザを倒すんだ。


で、なんでそんなに変わったのか、
この本を読んでスルスルわかった。
CEOの交代、ビジョンの明確化、「世界観」の共有による優先すべきものが見えたこと、企業文化、優秀な人材、伝統行事もどんどん変える、などなどなどなど。


また、
「評価制度はアクティビティから”インパクト”へ」
~売上を上げるだけの社員は評価されない~
とか、すごいこと言ってるなー、と思う。
既存の価値観ぶっこわし。素晴らしいんです。


つかったことの無い仕組みも色々やってるのは知ってたけど、
詳細に見てこれはなかなか素晴らしいなーと思った。
これからも続きが楽しみな会社だなー。
これ一冊読んだだけで、これからのMicrosoftがさらに楽しみになりました。

どんな本でした?

Microsoft最近イケてへん?
なんでイケてると思う?
みたいな本です。
わかりやすく読みやすい。


歴代CEOの違いとか、
今どんなビジョンの元にどんなサービスや製品を展開しているか、
みたいなことがよくまとめられています。


ちなみに、創業当初のビジョンは
「A computer on every desktop and every home(すべてのデスクと、全ての家庭に1台のコンピューターを)」で、
今は
「Empower every person and every organization on the planet to achieve more.(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする)」
だそうです。
なんというか、明確でいいですよね。


企業とか組織とかについて考え直すきっかけになる良い本。

こんな人に読んで欲しい本でした

・日々製品やサービスを使ってるけど、マイクロソフトについて、あんまり知らない人
Microsoftにこれからはいる人
Microsoftの株でも買ってみようか、という人
・イケてない会社をイケてる会社にしたい人

林家木久扇さんのイライラしたら豆を買いなさいを読んで

イライラしたら豆を買いなさい 人生のトリセツ88のことば (文春新書)

サラッと読める感じの本を読みたくなって読んでみました。


木久扇師匠の著書です。
笑点の黄色の。
ラーメンの。

 

なんというか、いつもおどけて人を笑わせてる人の真面目な、というか普通な話を聞いた気分。
飲み屋で話を聞くくらい気楽にサラッと読めます。

 

いや、2021年2月現在、飲み屋で気楽になんてしちゃいけないのだろうけど、
それはさておき。

 

プロかそうじゃないかの違いって、好きなテーマのひとつなんですけど、
私は「再現性があるかどうか」は、プロとそれ以外の区別をする上で大事な要素だと思ってます。

 

料理人で言えば、今日も昨日と同じ料理を作れること。
システム屋さんで言えば、前回と同じ見積もりで前回と同じ規模のものを作れること。
電車を日々同じ時間に同じ駅に到着させることができること。

 

んで、木久扇師匠。
毎度お馴染みの笑いをお届けしてくれるじゃないですか。
あれを50年ずーっとやってるって、超絶ものすごい話じゃないかって思うんです。

 

ローリングストーンズに近いくらいの積み重ねがあるのに、軽い。
なんでかわかんないけど「こういう人なんだ」と思ってたけどこの本を読んで、
30代から80いくつまでやってるの、ものすごい。

 

で、本の内容は真面目な一面を感じるもので、
時に合理的に、時に昭和のお父さん的にいろいろなことを教えてくれる。


共感するものもそでないものもあるけど、年長の友人が少ない人は、読んだら面白いんじゃないかしら。

「なめらかな世界と、その敵」を読んで。読書感想文

なめらかな世界と、その敵

なめらかな世界と、その敵

2019年のSFって、こうか!こうくるのか!
というのが第一印象です。


京大SF研 出身で、
あとがきから見るにかなりのSF好きな著者さんが書いたSF短編集なんだけど、
萌えっとして表紙やラノベばりの軽妙な文体が気になる人にはたぶん気になるんだけど、
テーマとそれを生かしたストーリーテリングが素晴らしく素晴らしい。


過去のSFの焼き直しっぽいものって、あるじゃないすか。
物語としては面白いけどテーマそれでええのん?っていう。
いや、もちろん大娯楽作品は素晴らしいんだけど。
それだけじゃないでしょう、と。


テーマが食材、ストーリーテリングが料理なんですよ。
ミステリであれば「謎」が食材で、それを解き明かす道筋が調理。
SFで言えば「テーマ」が食材で、それを生かしたストーリーが調理。


例えば表題作「なめらかな世界と、その敵」で言うと、
並行世界が食材で、高校生や犯罪者を活かしたストーリーに仕上げている。
で、「並行世界」の使用量が並じゃない。


何ページかに一回並行世界を行き来するんじゃなくて、
なんなら1行ずつ違う世界にいたりする。
なのに一貫したストーリーがちゃんとある。


食材の使い方がものすごくぜいたく、かつ、調理が適切。


ものすごい量の煮干しを使ったラーメン。あるじゃないですか。
昔ながらの中華そばではありえない、なんだかもうコナコナしたようなスープの。
あれをミキサーにかけて裏ごしして液体窒素で泡にして、
見た目チョコボールなのに食べたら超濃厚煮干しラーメン!
くらいの離れワザ。
それかアイドルxメタルのBABYMETALくらいの離れワザ。

どんな本?

2010年頃からいろいろなところに著者が発表していた短編を
2019年にまとめて発行したSF短編集。


並行世界、AIが発達したいわゆるシンギュラリティ後の世界、ニセSF歴史、時間と空間
みたいな扱いが難しいテーマを読みやすくしあげたナイスな一冊。
「2010年代のSFってこういうのだよね」と後日言われても不思議じゃない近代感。


かつ、友情や家族愛や妬みなんかの
「人対人の感情のやりとり」の描き方がうまいんですよ。
表現がうまい、というよりも、
はっきりくっきり見えるように提示してくれるかんじ。
ラノベっぽい」とレビューで書かれるのはそのあたりがあるからかな?

こんな人に読んでほしい本でした

・SFアレルギーがない
・なんかいままでにないSF作品が読みたい
・映画化しにくそうなSF小説を探している
・不思議なラブストーリーが読みたい

近況

COIVD-19以降、あまり本が読めなくなっていたんですが、
少しずつ、好きなものから再開しています。

劉慈欣さんの 三体II 黒暗森林を読んで。読書感想文。

三体Ⅱ 黒暗森林(上)

三体Ⅱ 黒暗森林(上)

超おもしろかった。


スケールがでかいのと、構図がわかりやすいから、たまに幼稚に見えるような時もあるのです。
文章も時々なんだかちぐはぐなように感じる時もあるのよ。
そのあたり差し引いても、まだまだありあまるくらい超おもしろかったよ。
なるべくネタバレしないようにどう面白かったか書きます。


インディ・ジョーンズ最後の聖戦という映画が昔ありました。
私、あれ好きなんですけど、
あれに近いような「幼稚に見える感じ」があるんですよ。
そこがイヤな人は嫌なんじゃないかなーと言う気もするけど。


なぜかというと
・派手
・キャラの味付けが濃い
・二項対立的演出が多い(これは解説にも出てた)
こんな感じ。
パーティーロック的な。アメコミヒーロー大集合!的な。


爆発するなら大きく大きく。
事件に巻き込む人数は一人でも多く(未来の人も含む)。
刑事は刑事らしく、博士は博士らしく、絶世の美女は夢が現実になったくらい美女。
そして、軍と民間、善と悪、宇宙と地球、力と知恵みたいな対立。


パワーパフガールズと悪の科学者モジョ・ジョジョ
バットマンとジョーカー。
アンパンマンバイキンマン
くっきりはっきり。
映像映えしそう。


うまいなー、と思った点としては、
小さい⇔大きい、
短い⇔長い
軽い⇔重い
真っ白⇔真っ赤
荒野⇔都市
みたいな振り幅で、より印象的に見えるようにしているあたり、
よくできてんなー、と思う。
なんというか脳内映える。


もちろん過去の名作SFの中には、
ものすごい長い時間を上手に使った作品もたくさんあるんですよ。
宇宙の終わりを見に行く話だってあるし、
5万年前の死体が出てくる話だってある。
振り幅でかいのはSFにはよくあることですよね。


三体はそこまで長い時間を感じさせないんだけど、
なんつったらいいのかなー、
時間の流れを感じさせるのがうまかったり。
「500兆円って言われるとピンと来ないけど、
 30円と300万円の対比ってなんか理解できる」
みたいなニクイ見せ方をしたりするんですよ。


ちなみに私、
この2作目を読む前に、
エンダーのゲームを読んだり、
2作目を読み終わった後に
1作目をもう一度読んだりしてます。
どっぷり。

こんな本でした。

前作「三体」につづく第二作。
訪れる全地球の危機。
遠くに見えていた驚異がついに迫りくる。
その時人類は、そしてその後地球は、
どうなっちゃうのー!!

こんな人に読んで欲しい本でした。

・一作目の「三体」を読んだ人
・一作目の「三体」の2周目を読んだ人
・SF読みたい人
・え?なんかNetflixでドラマ化の噂?気になる!という人
・とにかく売れてる本を読んでおきたい人
・いろんなところで高評価な本を読んでおきたい人


なんかもう読んでだいぶ経ってからのレビューなのに
自分でイマイチ納得感がない感想文になってしまったー。

アマゾンの料理人を読んで。太田哲雄さんすごい。という読書感想文。

アマゾンの料理人 世界一の“美味しい”を探して僕が行き着いた場所

アマゾンの料理人 世界一の“美味しい”を探して僕が行き着いた場所

  • 作者:太田 哲雄
  • 発売日: 2018/01/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

太田哲雄さんという料理人がいて、今は長野でレストランをやってるそうです。
この方の自伝なんですが、日本出身で日本でレストラン


昔から食べるの大好きでいろいろなレストランに行っていた→国内レストランで料理を学ぶ→海外一流レストランで料理を学ぶ(イタリアやスペイン。エル・ブリでも働いてたり)→イタリアでお金持ちの家の料理人になる→リアルを求めてアマゾンに行き着く→日本に戻ってレストランを始める
みたいな人。


このね、学生の頃というか、高校生くらいからもうお小遣いにぎりしめて一流レストランに行っちゃったりするのがそもそもすごい。
あ、そうそうラーメン王こと石神さんも同じようなことしてたんだよねたしか。


んで、その後世界中をめぐる冒険に出てるんだけど、
言葉がわからない国にもどんどん行くし、
未開の土地にもガンガン行くし、
その土地その土地に馴染んでいくし、
仕事が来ればがっつりこなすし結果も出すし、
取るべきコミュニケーションもしっかり取ってる。


旅の中で知り合った「カカオ村」の人たちを助けるための行動を続けたり、
なんというか、自分の価値観での判断力とやり抜く力?みたいなものが素晴らしく素晴らしいんです。


同じように世界に飛び立った料理人さんだと、
「10皿でわかるフランス料理」の松嶋啓介さんがとても印象的だった。
松島さんと太田さん、どちらもとてもおいしそうな料理を作る料理人さん。
どちらも人生の濃さに驚嘆するけれど、
太田さんは行動の意外性が素晴らしい。


K-1グランプリに出てたはずなのに、
気づいたら地下闘技場で戦ってたりするような、
まんがで行ったら刃牙みたいな面白さなんですよ太田さん。
料理というか、食を通して生を見つめてる感じ。

こんな本でした

奔放な料理人が世界に羽ばたいて行って、
いろいろな土地でいろいろなことを学ぶんだ体験談。
世界の広さと、世界中どこまで行ってもだれかが何かを料理して
食べてる、という当たり前のことを改めて感じる。

こんな人に読んで欲しい本でした

・おいしいものが食べたい
・料理に興味がある
・世界のいろいろな文化に興味がある
・どこか遠くへ行きたい

エンダーのゲームを読んで。読書感想文。

名前はずーーーーっと前から知ってたんですよ。
いつかは読むだろうなーと思ってたんです。
んで、ちょっと前に読んだ三体の解説かなにかにこの本のことが書いてあって、
あー、これは読みどきだなーと思ってたんです。


で、読んだらこれがやはり面白い。
おいしそうで気になってたお店にようやく入って料理を食べた時みたいな、
吉祥寺みんみんであさりチャーハンと餃子を初めて食べたときのような
あー、そうそうこういう感じねー的な感動があるような。


少年がね、家を出て、軍隊に入れられて、
人類を滅ぼそうとする謎の宇宙生命体をやっつける戦争の
兵隊になる訓練を受ける話なんですよ。


今までみんなが積み上げて来た方法と違うやり方で大活躍します。
天才的に強い。
年上の先輩たちを次々に打ち破る。
一個の戦略に対策をされても、新たな戦略でまた勝っちゃう。


だんだん対策は厳しくなって、
ルールも捻じ曲げられていって、
敵と戦ってるんだか、自分と戦ってるんだか、
よくわからなくなるくらい追い詰められていきます。


あと、冒頭だけ出てきてあとは出てこないのかな-
と思わせておいて、後でまた出番がある登場人物の出し方がうまい。

こんな本でした

謎の異星生物との戦いを乗り越えた人類、
再度の戦いのためにエリートを育て上げることが課題。
一人の少年が選ばれ、試練を乗り越え、成長していく。
苦戦苦闘を乗り越える主人公を最後に待つものは!?

こんな人に読んで欲しい本でした

・三体読んでこの本が気になった
・宇宙もののSFに飢えている
・とにかくSF読みたい
・少年が孤独に打ち勝って成長する物語が読みたい