- 作者: 伊藤計劃
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/02/10
- メディア: 文庫
- 購入: 75人 クリック: 954回
- この商品を含むブログ (514件) を見る
大量殺人鬼だけを殺し続ける殺人鬼に罪はあるのか罪悪感はあるのか。
そんなお話でした。
癌と戦いながら素晴らしいSF小説を残した
伊藤計劃(いとうけいかく)さんという作家さんがいて、
その人のデビュー作だったそうです。
素晴らしい小説でした。
読書が趣味でよかった。
これが数百円で読めるなんて、幸せ。
どんな内容?
たぶん今から10~20年以内くらいの未来、
悲しいことに再度原子力爆弾が使われてしまった世の中、
たくさんの新兵器はできても戦争は無くならず。
米国の暗殺部隊所属の主人公が、
心に葛藤を抱えつつ、スルスルと逃れる人物を追う。
みたいなあらすじ。
SFです。未来の話です。
なのに、
「最近のできごと」とか
「世界の状況」とか
「兵器の設定」とか
「最新の戦争」とかが
ほんとによくできてます。
ほんとによくできてる。
いくつか「え?それはなんでそうしちゃったの?」
というところもあるけども。
進化したものと進化してないものがある設定
ということで、そこは飲み込みましょう。
あと「善悪の対立」の描き方が新しいんです。
大昔の物語には完全悪があった。
鬼や悪魔の類い。
その後、悪なんてなくて立場の違いから敵対するような話が増えた時期があった。
それぞれの正義みたいな話。
そして、この物語で描かれるのは、
「大量殺戮を止めるために、人殺しをする人たち」。
なにが悪かなんてもうわからない。
人の死や「組織の死」「種族の死」みたいなものが繰り返し描かれている。
脳死はオンオフじゃなくていくつもの段階があるよ。とか。
「頭が死んだら死んでるの?」というのは生き物も組織もそうだよねー。
と考えざるをえない。
「けんかをやめて、二人を止めて
私のために争わないで」
っていう歌を思い出しますよ。
けんかをする二人が悪いのか、
けんかせざるを得ない状況を作った「私」が悪いのか。
ああもうストーリー全部書きたい。
でも、おすすめだからこそ、書きません。