知らない人のために説明しておくと、
一人ナイツと言うのはEテレの「2355」という23時55分から始まる番組のワンコーナーで、
お笑いコンビのナイツが片方ずつネタを披露する、という内容。
ナイツの芸は「言い間違いを訂正する芸」なのに、
まず、訂正する人が居なかったり、逆に言い間違える人が居ないのに訂正し続けたり、というのを見せられる。
その不思議な面白さを体験した後に、
「このまえインターネットのヤホーで…」「いやヤフーですからね?」
という二人揃っての話が始まり、ほっとしつつ笑えるもの。
私はこのコーナーがとても好きで、毎回同じ内容だったとしてもじっとみてしまう。
一人サンドウィッチマンだとただ独り言を続ける怖いおじさんだし、
一人キャイ~ンはなんだか可哀想になってしまう。
天野くんがいないキャイ~ンなんて耐えられない。
もちろん、一人ナイツはナイツのネタが元になっているので、
ためになるかといえば、あんまりためにならない(人によるけど)。
でも、この本は違う。
一人ナイツみたいにおもしろいのに、
とてもためになる。
どんな本?
作家にして自由律俳句の俳人であり短歌の歌人であり元ハガキ職人でありバカはサイレンで泣くの元投稿者であり一時ルノワールばかり行っていたはずの著者が、たとえについて教えてくれる本。
たとえば「視点を変える」というパートでは、
「『こんな女性アイドルは嫌だ』というお題に対して、
女性アイドル→女性→人間→動物→生物→地球
のように広げてそれぞれの『嫌だ』を考える手法」
を解説してくれる。すると
農作物を荒らす女性アイドル
という、一見突拍子もない例文が生まれた背景が見えてくる。
・たとえの便利さ
・たとえの技法
・たとえの奥深さ
・たとえの実践
・こんな時、こんなたとえ
などなどをとても丁寧に指導してくれる。
学校の授業で「笑い」があったら、
教科書の一部になってもおかしくないと思う。
そんなとてもためになる本だが、
面白さ(あるいは違和感)がいろいろなところににじみ出ている。
変なところにピントが合ってしまった写真のような、不思議な面白さ。
写真の技法を学ぶ内容なのに、作例が変顔みたいな本。
「作例が変顔ばかりの写真技術書のような本」とも言えそう。