私は哲学について全く詳しくない。
哲学者の名前もたいして知らないし、
若い頃文学青年で重い哲学書を開いて自問したこともない。
頭イイ人が人生とか存在とかについてずーっと考えてる学問なことは知ってる。
ほら、工学部電子工学科ですからね。
正直、物理学より理解したいという願望がない。
でもこの本に興味を持ったのは、
哲学者の本じゃなくて
考えていることの本だから。
なにかに対して熱烈な愛や執着を持ってる人というのは
漏れなくおもしろい。
と前から思っている。
プロレス観戦もおもしろそうだけど、
プロレスファンが練りに練った
(というか自然と練れちゃった)
プロレスの話を聞くのは楽しい。
同じように、何を見ても何かを考えたり
何を見ても何かを思い出している哲学者さんの話も
おもしろかんべー、と思って、
この本を読んでみた。
初手から哲学的思想を学ぶ気も哲学者の名前を覚える気もなく読むと、
この本は「未来本」の仲間になる。
IT、資本主義、バイオテクノロジー、格差、テロ、宗教などなど、
いろんなテーマについて
「◯◯センパイいるじゃないっすか?
こんなこと言ってたんすよ」
と教えてくれるのだ。
もちろんこっちは◯◯センパイのことなんて知らんけども。
どんな本なの?
第一章は、ここんとこの哲学と哲学者の紹介です。
第二章以降はいろんなテーマを取り上げる。
上にも書いたけど、ITから宗教まで。
例えばさ、
「You、不老不死になったらどうすんの?」
「クローン人間て全部おんなじになんの?ヤバくね!?」
みたいな、ね。
「悟空とスーパーマンどっちが強ぇ?」
みたいな話をですよ、いい大人が、
しかもむっちゃくちゃ勉強している大人が考えるわけですよ。
そりゃ楽しいよね。
「一神教は神が心のなかにいて、
多神教は外にいる」
みたいな話とか。
居酒屋でエイヒレかじりながら話したいテーマだよね。
「え?ちょ待って?
地球環境守るなら人間根絶やしにしたほうがよくね!?」
みたいなスゴイこと言い出すセンパイもいたりして。
そりゃあもうてんやわんやのしっちゃかめっちゃか。
ナレーションは広川太一郎さんみたいな状態に。
あ、でもほんとはそんなに軽くなくて、
しっかりずっしり重い文体の本なので、
おもんないっつって怒んないでね。
つまるところ、
哲学に詳しい人にはたぶん物足りない内容だし、
各項目それぞれのプロフェッショナルからすると
「まあそりゃそうだけど、そこ取り上げる?」
みたいな内容なのかもしれんけど、
「さわり」の部分を味わうにはいい本なんじゃないかと思います。