うさみ本棚

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「なめらかな世界と、その敵」を読んで。読書感想文

なめらかな世界と、その敵

なめらかな世界と、その敵

2019年のSFって、こうか!こうくるのか!
というのが第一印象です。


京大SF研 出身で、
あとがきから見るにかなりのSF好きな著者さんが書いたSF短編集なんだけど、
萌えっとして表紙やラノベばりの軽妙な文体が気になる人にはたぶん気になるんだけど、
テーマとそれを生かしたストーリーテリングが素晴らしく素晴らしい。


過去のSFの焼き直しっぽいものって、あるじゃないすか。
物語としては面白いけどテーマそれでええのん?っていう。
いや、もちろん大娯楽作品は素晴らしいんだけど。
それだけじゃないでしょう、と。


テーマが食材、ストーリーテリングが料理なんですよ。
ミステリであれば「謎」が食材で、それを解き明かす道筋が調理。
SFで言えば「テーマ」が食材で、それを生かしたストーリーが調理。


例えば表題作「なめらかな世界と、その敵」で言うと、
並行世界が食材で、高校生や犯罪者を活かしたストーリーに仕上げている。
で、「並行世界」の使用量が並じゃない。


何ページかに一回並行世界を行き来するんじゃなくて、
なんなら1行ずつ違う世界にいたりする。
なのに一貫したストーリーがちゃんとある。


食材の使い方がものすごくぜいたく、かつ、調理が適切。


ものすごい量の煮干しを使ったラーメン。あるじゃないですか。
昔ながらの中華そばではありえない、なんだかもうコナコナしたようなスープの。
あれをミキサーにかけて裏ごしして液体窒素で泡にして、
見た目チョコボールなのに食べたら超濃厚煮干しラーメン!
くらいの離れワザ。
それかアイドルxメタルのBABYMETALくらいの離れワザ。

どんな本?

2010年頃からいろいろなところに著者が発表していた短編を
2019年にまとめて発行したSF短編集。


並行世界、AIが発達したいわゆるシンギュラリティ後の世界、ニセSF歴史、時間と空間
みたいな扱いが難しいテーマを読みやすくしあげたナイスな一冊。
「2010年代のSFってこういうのだよね」と後日言われても不思議じゃない近代感。


かつ、友情や家族愛や妬みなんかの
「人対人の感情のやりとり」の描き方がうまいんですよ。
表現がうまい、というよりも、
はっきりくっきり見えるように提示してくれるかんじ。
ラノベっぽい」とレビューで書かれるのはそのあたりがあるからかな?

こんな人に読んでほしい本でした

・SFアレルギーがない
・なんかいままでにないSF作品が読みたい
・映画化しにくそうなSF小説を探している
・不思議なラブストーリーが読みたい

近況

COIVD-19以降、あまり本が読めなくなっていたんですが、
少しずつ、好きなものから再開しています。