イイ読書でした。
おもしろかった。
一気にではないけど(文庫で読んだから6冊を順番に、かつ途中に他の本もはさみながら読んでた)
さすがのベストセラーですよ。
と言いつつ、Wikipediaとか見てると、海外では冗長とかぎこちないとかの書評もあるらしい。
そっちもわかる。
なんというか、洗練不足な感じを受けた。
とても面白く読んだのだけど、
これ、たぶん全盛期の村上春樹さんと、そのスーパーサイヤ人村上春樹と全力でバチバチ戦えるくらいのナメック星人編集者さんとで作り上げてたらまだもっと面白かったんじゃないかしら、と思っちゃったんだよね。
人が指定した皿だけを食べる回転寿司みたいな印象だった。
あ、回転寿司のネタ、おおよそなんでも好きなんだけどね、
職人のおまかせではなく、一皿2貫のおいしいお寿司。
食べられるから食べるけどおなかはいっぱいなんだよな、と。
どんな本でした?
村上春樹の5年ぶり12作目の長辺小説にして、全巻ミリオンセラー、30以上の言語に翻訳されている大、大、大ベストセラ―。
ハードカバーは全三巻、文庫版はハードカバーをそれぞれ上下に分けて全六巻、というペヤングソース焼きそばの超大盛りなみのボリューム。
かつ、丁寧に作られていて、おおよそどこを切り取っても何かがあっておもしろい。
最終巻の残り60ページくらいはもう
「え?終わるの?これ終われなくない?」と思うようなたたみかける展開。
毎回毎回続きが気になるー、で終わる。
1984年頃が題材になってるから、宗教問題やら学生運動の名残やらがちょっとずつ表現されてたりする。
あと、タバコが吸えたり、今よりジェンダー的な話が出てこなかったりもする。
主人公二人の視点が順番に語られて、3巻目ではそこにもう一人の視点が入る。
スイッチバックみたいに違う方向から描かれる。
気付いたら違う世界に紛れ込んでしまう主人公たち、すれ違う二人、交錯する登場人物たちの思惑、たどり着く二人。
美しいメロディを超絶技巧と複雑な展開でお届けする一大交響曲みたいな、
あるいは上映時間6時間、構想26年、撮影16年の一台スペクタクル映画のような、
まあとにかくすごいお話なんですよ。
ただ、「あれ?ここさっきも読まなかったっけ?」という部分があったり、
「そこまで繰り返さなくてもいいのではー」というくらい説明文があったり、
という点は、これ、正解だったのかしら、と思わなくもないんですよ。
こんな人に読んでほしい本でした
・村上春樹そこそこ読んでて、まだ読んでない人
・小説家あるいは編集者を志していて、まだこれ読んでない人
最後にどうでもいい話
私、たしか出版されて少したって、BOOK1を読んでそこで止まってた、とかそんな感じだったんですよ。201X年くらいだったんだと思う。
んで、最近職場の若手の人に今年この本が好きだという話を聞いて読んでみたのよ。
20代前半くらいのころに片っ端から読みまくっていたあの村上春樹の続きだ!と
今回もおもしろかったけど、これが私のベストではないかもな。
たぶんこの10年の間に読んでる他の本が充実してるのと、
自分の受け取り方も変化してるんだろうな、と思った。
せっかくだからまだ読んでない村上春樹作品も読んでみようかしら。
でも、もしかしたらこどもがアンパンマンを見るみたいに、
村上春樹が楽しいのは人生の一場面だったらどうしよう、
と思わなくもない今日の私です。
おもしろいおもしろくないの違いがなんなのか、たいへん気になる。
「おいしい料理」があるわけじゃなくて、
「おいしいと感じる料理とおいしいと感じている食べ手」がいるもんだよな、という話なんだと思うのよ。
こういうこと考えるのが超楽しいのはありがたい。
ちなみに、これを読む前に自分のブログの村上春樹ネタを探して
なか卯でランチを食べることについて語る時に僕の語ること - うさみ日記
とか見ておもろいなー、と思い出せたので、得した気分です。