人におすすめされた本は読むようにしてるんですよ。
んで、たまに自分だと選ばないよなー、という本が来るんです。
これもそんな一冊。
1997年出版。80万部を超えるベストセラー。
ドラマ化映画化舞台化されて、英訳もされて長編推理小説のエドガー賞にノミネートされたりもしている。
よくこんなストーリーを思いついて、しかも書き上げていただいた、と思うようなすごい話。
著者の昔のインタビューを読んでいると「アンフェアネスが大嫌い」とか「事件は社会の裂け目」というようなことが書いてある。
この本は実際に起きた事件ではないけど、似たような事件はあることを思うとこの「社会の裂け目説」にはちょっと納得してしまう
犯人は1人なんだけど、その犯人がその事件を起こしてしまった背景があるのよね。
それを「変な人がいるもんだね」で済ませるか、「社会のほころびが起きてしまった」と思うか。もちろんどっちもあるんだろうけど。
事件が夜に起きて、その後始末を昼間にするのも印象的だった。
夜、それも深夜に、疲労の詰まった先の先に裂け目ができてしまう。
それを隠そうとする。
隠しても隠しても、その見えない裂け目が残っていて、元の場所にいるのに元と同じではない。
舞台背景は全体的に寒い。
季節や気温の面で言っても、人間関係にしても冷めきっている。
友人、仕事仲間、親子など、いろんな関係が出てくるけれど、本当に心を許し合った関係っていうのがことごとく出てこない。
亀裂はさらに広がり続ける。
水面を漂う氷が割れて離れて融けて小さくなって…、みたいな関係性だけが繰り返される。
で、その背景として描かれる社会。
心から安心できる暖かいシーンが出てこないこと出てこないこと。
これ、出版されたの1997年なんだよね。バブル後。楽天的な季節が終わってしまって冬が来ている。
この物語の時代はたしかにあったし、今はその地続きなんだよな、と思う。
どんな本でした?
弁当工場の深夜パートの主婦が、事件を起こしたり、事件を隠したり、事件に巻き込まれたりする物語。
出てくる地名は多摩地区や新宿、多摩地区在住の私にはとてもなじみ深く、光景が目に浮かぶかのようでした。
そうそう、あの辺でっかい工場地帯があって、なんだか怖いんだよね、と思う。
夫を殺した妻、それを見て逃げた猫
会話の無い家庭の主婦、部屋に閉じこもる夫、無言の息子
夫に逃げられた妻、妻をおいていなくなった夫
寝たきりの義母をうとましく思う母、母と祖母の家から逃げ出したい高校生
この仕事も長くないと思いながら働く街金の男、やっと作った城を壊される前科者、愛されていないことに気づく女、経営者に信頼されていない店長、お互いの考えが間違っていると思う刑事、
ブラジルから出稼ぎに来たはずなのに孤独だけを抱えている日系ブラジル人、
そんな登場人物たちがそれぞれの思惑でそれぞれに行動する物語
終わり方もとてもよかった。
なんというか、個々、って感じで、ブレがなくてよかった。
ネタバレにならないようにあんまり書かないけど、
「えっ!そっちに行くの」と思うことが何回も起きる
暮らせてはいるけれど、豊かではない、という世界と、その裂け目なんだよねー。
っていうか豊かさってなんだろうね、みたいなことを思う読書でした
