うさみ本棚

うさみの本棚です。おすすめされた本を読みますので、おすすめ教えてください!

アレックス・バナヤンさんの「サードドア」を読んで。読書感想文。

サードドア―精神的資産のふやし方

「ビル・ゲイツに会えるか」という実験を通した主人公の変化についての本です。

 

タイトルの「サードドア」、いい言葉なんですよ

いろいろな人に会うことをクラブに例えて、正面から入るファーストドア、VIP用の裏口から入るセカンドドアがある

どちらからも入れない人はどこから?というと、それがサードドア

 

公式ページから引用すると

裏道を駆け抜け、何百回もノックして窓を乗り越え、キッチンをこっそり通り抜けたその先に「サードドア」は必ずある。

 

主人公は最初大学生で、有名人に会おう、ということだけ決めて、つてをたどって少しずつ有名人に会う

最終的には超有名人に会って会話したりアドバイスしたり、会った人との関係性からベンチャーキャピタリストになったりもする

という、映画みたいな本当の話

 

本人が実践しているから、ものすごい説得力がある

「失うものは何もない!」くらいの気概で挑んで、最終的に準備不足を痛感したりするのも、とても共感できるし、そこに学びがある

 

一見泥臭く、カッコ悪く見えるけど、人生を切り開いていく様がむちゃくちゃかっこいい

 

今思うと、わたしも少しだけ似たようなサードドアを使ったことがある

 

マーケティングの本を何冊も出している権威の方にお声かけして、主催イベントに登壇してもらったり

宇宙についてのメディアの編集長に、宇宙ビジネスに興味がある人向けの主催イベントに登壇してもらったり

 

今思えばどちらも金銭的あるいはモノ的なお礼もせず。しかもそのあと仲良くなって、プライベートで会ったり、忘年会イベントにも来てもらったりした

 

あれは本当に大切な経験だった

 

で、この本で紹介しているサードドアは対人間関係だけど、コミュニティや組織についても実は無数にサードドアがあるんだろうな、と思う

 

新た視点を手に入れたい人に、ぜひ読んで欲しい本でした

 

三島由紀夫さんの「命売ります」を読んで。読書感想文。

命売ります (ちくま文庫)

今まで読まずにいた作家の1人、三島由紀夫。完全に食わず嫌いでした。おもしろかったー。

 

一部引用させていただきます

 

「今では、まるで、猫を抱いて寝ているように、温かい毛だらけの恐怖が、彼の胸にすがりつき、しっかりと爪を立てていた。」

 

これ、書ける人他にいない。

 

 

かつ、これをずーっとやられたらしつこいんだけど、おおよそシンプルに進ませて、決めたいシーンでこのくらいのことをスッと入れてくる。

 

 

突飛な思いつきみたいなコンセプトを、物語として成立させて、読み手に臨場感ある没入体験をさせる。五感に訴えてくる表現。

 

とか、表現のことばっかり書いちゃったけど、ストーリーがそもそも面白い。

 

主人公の葛藤と価値観の揺れ、それに対する強烈な登場人物たちの揺るがなさ。

 

連作みたいな構成でありつつ、前に出てきた登場人物が効果的に出てくる。伏線の回収が当たり前のようにされる。

 

いやはや、他も読みたくなった一冊でした。

小澤征爾さんの「ボクの音楽武者修行」を読んで

ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)


「まんがのノベライズ?」と思うほど

世界を股にかけ、アクティブで、ドラマチックで、力強くて、事実は小説よりも奇なりを地でいく自伝。

 

天才ピアノ少年がラグビーで怪我、挫折、指揮者への道、ヨーロッパへの貨物船での船旅、ギターを背負ってもらったバイクでパリへ、運良く有名な指揮者のコンペに出場、苦戦、優勝。

苦しい場面で救ってくれる仲間や先輩たち、再会、挫折、スキー場で宴、復活、無双

その後は世界中で大活躍。

 

貨物船で旅立った若者が世界屈指の指揮者になって飛行機で帰国。

みたいなストーリーが、本人の生々しくイキイキした文章で綴られる。

 

破天荒に見えてひとつひとつ狙ったことを実現していく。孤独を感じる弱さもあるけど、そこを乗り越えていく。

超おもしろい。

 

しかもこれ今の話じゃなくて、貨物船でフランスに渡ったのが1959年とかだよ。

おおよそ70年前。

 

今まさに停滞感を持ってる人とか、勢いをつけて立ち上がりたい人に読んで欲しい本。

渡辺佑基さんの「ペンギンが教えてくれた物理の話」を読んで

ペンギンが教えてくれた物理のはなし (河出文庫)

 

海洋生物学者にして、バイオロギング界隈のすごい人、渡辺佑基教授の本です

 

世界中の海の生き物や鳥に小型のセンサーやカメラをつけて、その生態を知る、という実験が科学技術の発展とともに改善されてきていて、その過程とそこからわかったことをまとめた本。

ペンギンだけでなく、マグロ、クジラ、アホウドリなんかも対象。

 

また、バイオロギングの先駆者や歴史や方式もいろいろ紹介してるんだけど、現場でやっていた人だけに海の潮を感じるくらいのリアル感。楽しい。

 

渡り鳥や海の東西南北を一年単位で行き来する魚や海洋哺乳類と移動と地球の四季や海流を交えて紐解く。おもろい。

 

スケールでかい。

そもそも「魚の研究、主にマグロ」とかじゃなくて、「鳥も魚も哺乳類も」みたいな節操のなさがいいよね。

 

そんな渡辺佑基さん。最近は逗子市葉山の大学で後進の育成に当たってるらしい。

今後も楽しみにしたい分野よね。

 

動物好きな人、生き物に興味がある人、ダーウィンが来たを気づいたら見ちゃう人にはおすすめしたい本。

グレッグ・イーガンさんの「しあわせの理由」を読んで、読書感想文

しあわせの理由


久しぶりのハードSF!
グレッグ・イーガンの短編集です

クセが強い…。どの話もクセが強くてそこがいい。


SFなんだけど、あちらを立てればこちらが立たぬ的な、パラドックス的なテーマなんですよ結局。
視点の違いで善悪が入れ替わったり、トレードオフ的に片方を伸ばすともう片方が成り立たなくなったり。


現実の残酷さみたいなものがどのストーリーでも押し寄せてくる

不死だけど自殺を選ぶ人、大けがをした最愛の人のために自らを犠牲にする人、常に幸せを感じられていたのに脳の腫瘍摘出手術で幸せを感じられなくなってしまった人

などなど

 

人間の悲しさと滑稽さがいやというほど語られる

 

これ読んだのはちょっと前で、最近村田沙耶香さんの世界99の上巻を読んだ

 

この辺からの影響もあるのかしら、と思いつつ、科学的検証をいちいちしてそうなのがグレッグ・イーガンの強さだなー、とか思うなど

中野信子さんの「脳内麻薬」を読んで、読書感想文

脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体 (幻冬舎新書)

私、コロナ渦で転職して、在宅が増えたから走るのを始めたんですね
最初は運動不足になって太り始めたから
でも気づいたら、別に痩せるわけでもないのに距離を伸ばしたくなったり、マラソン大会の10㎞の部に出たり、ハーフマラソンの大会に出たりしていた
小雨の中でも走ったり

人間って利害だけで動いてないよなー、というのは以前から思っていました
メリデメだけ見たらやらなくてもいいようなことをまぁやりまくる
ゲームをずーっとやっちゃったり、長い距離を走ってみたり、速い車でぶっ飛ばしり

なんで?と思うと、それをやっちゃうメカニズムが備わってるから、なんだよな、と思って
知りたくなって読んでみました

この本では、脳の仕組みが解説されます
過去に行われた脳内麻薬の動物実験のことなんかも出てきます
依存症のメカニズムと、それに脳内麻薬がどう関わっているかも紹介されます

そうそう、ランナーズ・ハイの仕組みも説明してくれます
30分、10㎞くらいの距離を限界に近いスピードで走ると、痛みを和らげるためにβエンドルフィンが脳内で分泌されて、これがモルヒネと同様に作用する
中毒になっちゃう人もいる、と

人間、おもしろいなー、と思うよね

久保(川合)南海子の「『推し』の科学 プロジェクション・サイエンスとは何か」を読んで、読書感想文

「推し」の科学 プロジェクション・サイエンスとは何か (集英社新書)

推し、いる?

わたしは特にいなくて、強いて言えば自分のこどもくらいです
推しがいる人ってさ、すっごい幸せそうだなー、と思うときない?

友達の奥さんと娘さんが嵐のラストライブの配信を見たらしいんですよ
33曲、3時間
終わったと思ったらまだ続く長いMC
で、それを毎日見てるらしいんです
毎日3時間、すごい

あと、わたしのいとこが中学生くらいの時にバイクが大好きで、鈴鹿8耐の録画を毎日のように見てたんですよ
さすがにぶっ通しで8時間は見てなかったと思うけど

この本では、認知科学的に推しを推すときにどんなことが脳の中で起きているか、みたいなことを書いた本です

なにかを好きな気持ちって、一時的に強くて弱まったりするんじゃないの?飽きたりとか
なんでより強く好きになるんだろう
推しが自分になにかをしてくれたわけでもないのに

例えばアイドルならマスに対して発信してるじゃない?
アニメキャラとかだったら別に見てる人に何かをしているわけではない
なのに、推しを推す人は前よりももっとずっと対象が好きになってしまって推してしまう

なぜかと考えると、推しを推す自分の行為だけで、推しを思う自分の気持ちがより強くなってるからだよね、という話
プロジェクターが対象を照らしていろいろな絵を描くように、自分の強い思いが対象をより強く照らし、より強く照らされた対象が自分にさらに強いフィードバックをもたらすのだ!みたいな話

超おもしろくない?