うさみ本棚

うさみの本棚です。おすすめされた本を読みますので、おすすめ教えてください!

失敗の科学を読んで。読書感想文。

失敗の科学


失敗の科学。
いいタイトルですよね。
好き。


科学とはなにか、といいますと、

一定領域の対象を客観的な方法で系統的に研究する活動。また、その成果の内容。特に自然科学を指すことが多い。

出典:Oxford Languages


です。
「失敗」を客観的な方法で系統的に研究する活動と、その成果。
の本です。


この本には過去のいろいろな失敗が出てきます。
失敗を分析して、今後に活かそう、という主題の本。
たいへん素晴らしいです。
これは推せる。本棚に置き続けてもいい本かも。

どんな本ですか?

最初のほうで出てくるのが
「医療ミスを隠蔽し続けて、共有しなかったため取り返しのつかない失敗をし続けた」
「航空事故から学んで事故率、死亡率を下げ続けた航空業界」という対比が出てくるんですよ。
どっかで聞いたことある話でしょ。
心理的安全性の本とかでよく読むよねこんなの。


この、どっかで聞いたことある話をちゃんと深堀してくれているのが素晴らしいんですまず。
全人類に読んでほしい。
心理的安全性を上げろと言われるよりも、人が無駄に死ぬのを防ごうぜ、という話からのほうが得られる教訓が多いんじゃないかと思う。


その後も様々な失敗が描かれる。
人類の歴史って失敗の歴史よね、って思う。
でも、失敗の解説では終わらないんですよ、この本。
失敗から学ぶことが成功への道だよ。
ってことがかかれている。


っていうか、引用しますけども
『失敗は「してもいい」ではなく「欠かせない」』
というのがこの本に書いてある大事なことのひとつです。


たくさんの例が出てきます。
F1のエンジンの話、Googleのデザイナーの話、大食いの小林尊さんの話、デヴィット・ベッカムの少年時代のリフティングの話、マイケル・ジョーダンが外したシュートの数をした話などなどなどなど。


大きな課題を小さく分割して改善しよう、
失敗を積み重ねよう。


まあ、もちろんしなくてもいい種類の失敗、成長につながらない失敗というのもあるけども。


そうそう、成長につながらない失敗の話。
フジイユウジさんという、私がリスペクトしている友人が以前ある月だけ毎日ブログを書いてたんですよ。
いや、やればできる男だわーさすがだわー毎回毎回名文章書いて、
ほんとすごいな、と。


その中で
「ともかく行動」は無駄になりがちで「行動量を増やして学習を積み上げる」とは違うよね、の話。 - フジイユウジ::ドットネット
という記事の中で

行動量を増やすにしても「当たりハズレの確認を沢山する」のと「学習を積み上げる」では意味が違う。

という話をしてました。
繰り返すのが大事じゃなくて、繰り返しから学ぶことが大事、と。

この本をおすすめしたいのはこんな人

・失敗ってなんだろう、と考えたことが無い人
・発言しにくい場面で、発言しなかったことがある人
・発言しにくい場面を作っちゃったことがある人
・っていうかもう全人類!

野中郁次郎さんの「本田宗一郎: 夢を追い続けた知的バーバリアン」を読んで、読書感想文

日本の企業家 7 本田宗一郎 夢を追い続けた知的バーバリアン (PHP経営叢書)


前に同じ著者のアメリ海兵隊はなんであんなに強いの?みたいな本を読んで、なんて素晴らしい書き手なんだろう、と思った私です

一つのことへのフォーカス仕方が素晴らしいのと、多角的かつ熱くかつ冷静に語りに語る

 

で、ある人がたまたまこの本を最近おすすめしてて、読んでみた
これもむちゃくちゃおもしろかった


**どんな本です?
三章あって、
一章が本田宗一郎という人の生涯のストーリー、生まれてから死ぬまで


いたずらっ子時代から修理工場の丁稚になって、地元に戻って会社を始めて、組織が大きくなっていく過程を描きつつ、魅力的な人柄や周りにいかに慕われていたかとか、技術に関するレベルの高さを記述する
技術力の凄さ、五感の鋭さ、機械に触れることがいかに好きだったか、どれだけ人から好かれてあるいは恐れられていたか


周囲の人との関わり方や比較なんかもふんだんに
全社員に記念イベントのアイデア募集して優秀者に賞金出して京都で豪遊しまくって、とか
最高です


二章ではその素晴らしい人柄や技術力を様々な角度から分析しまくる
「何が優れていて何がダメな人だったのか」
「周りの人とどんな関わり合いをして、どう相互補完していたのか」
とか
とにかく深掘りしまくるんだけど、アカデミックなのに大変おもしろいのがすごい


すぐれた人の資質として以下の6つをあげてて、本田宗一郎は多かれ少なかれ全てを兼ね備えてるらしく、
さらに、経営面を担っていた藤沢 武夫さんが不足する部分を補っていた、と


ちなみに6つの資質というのは
1.「善い」目的をつくる能力
2.ありのままの現実を直観する能力
3.場をタイムリーにつくる能力
4.直観の本質を物語る能力
5.物語りを実現する政治力
6.実践知を組織する能力


三章では生前の本田宗一郎と仕事をしていた色々な人にインタビューして、客観的かつ多角的にその実像を浮かび上がらせる


そのあとおまけとして生前の本田宗一郎の生前のが全国の主任レベルの人を集めて講和した時の録音の書き起こし
なんというか、本人が話してるみたいな熱くて強い文章


決して砕けた文体じゃないのに、どんどん続きが読みたくなるあたりさすがだなーと思う
あ、SECIモデルの話も少し出てくるよ^_^


**こんな人におすすめしたい本でした
・ホンダファン
・組織やリーダーシップについて考える人
・仕事つまんねー、と思ってる人
本田宗一郎ファン
スーパーカブファン
・F-1ファン
野中郁次郎ファン


おまけ
野中郁次郎さんのホンダについてのインタビュー記事があったので、興味ある人はこちらもどうぞー
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00082/111800004/

村上春樹さんの1Q84を読み終えて、読書感想文。

イイ読書でした。
おもしろかった。
一気にではないけど(文庫で読んだから6冊を順番に、かつ途中に他の本もはさみながら読んでた)
さすがのベストセラーですよ。


と言いつつ、Wikipediaとか見てると、海外では冗長とかぎこちないとかの書評もあるらしい。
そっちもわかる。
なんというか、洗練不足な感じを受けた。


とても面白く読んだのだけど、
これ、たぶん全盛期の村上春樹さんと、そのスーパーサイヤ人村上春樹と全力でバチバチ戦えるくらいのナメック星人編集者さんとで作り上げてたらまだもっと面白かったんじゃないかしら、と思っちゃったんだよね。


人が指定した皿だけを食べる回転寿司みたいな印象だった。
あ、回転寿司のネタ、おおよそなんでも好きなんだけどね、
職人のおまかせではなく、一皿2貫のおいしいお寿司。
食べられるから食べるけどおなかはいっぱいなんだよな、と。

どんな本でした?

村上春樹の5年ぶり12作目の長辺小説にして、全巻ミリオンセラー、30以上の言語に翻訳されている大、大、大ベストセラ―。
ハードカバーは全三巻、文庫版はハードカバーをそれぞれ上下に分けて全六巻、というペヤングソース焼きそばの超大盛りなみのボリューム。


かつ、丁寧に作られていて、おおよそどこを切り取っても何かがあっておもしろい。
最終巻の残り60ページくらいはもう
「え?終わるの?これ終われなくない?」と思うようなたたみかける展開。
毎回毎回続きが気になるー、で終わる。


1984年頃が題材になってるから、宗教問題やら学生運動の名残やらがちょっとずつ表現されてたりする。
あと、タバコが吸えたり、今よりジェンダー的な話が出てこなかったりもする。


主人公二人の視点が順番に語られて、3巻目ではそこにもう一人の視点が入る。
スイッチバックみたいに違う方向から描かれる。
気付いたら違う世界に紛れ込んでしまう主人公たち、すれ違う二人、交錯する登場人物たちの思惑、たどり着く二人。


美しいメロディを超絶技巧と複雑な展開でお届けする一大交響曲みたいな、
あるいは上映時間6時間、構想26年、撮影16年の一台スペクタクル映画のような、
まあとにかくすごいお話なんですよ。


ただ、「あれ?ここさっきも読まなかったっけ?」という部分があったり、
「そこまで繰り返さなくてもいいのではー」というくらい説明文があったり、
という点は、これ、正解だったのかしら、と思わなくもないんですよ。

こんな人に読んでほしい本でした

村上春樹そこそこ読んでて、まだ読んでない人
・小説家あるいは編集者を志していて、まだこれ読んでない人

最後にどうでもいい話

私、たしか出版されて少したって、BOOK1を読んでそこで止まってた、とかそんな感じだったんですよ。201X年くらいだったんだと思う。


んで、最近職場の若手の人に今年この本が好きだという話を聞いて読んでみたのよ。
20代前半くらいのころに片っ端から読みまくっていたあの村上春樹の続きだ!と
今回もおもしろかったけど、これが私のベストではないかもな。


たぶんこの10年の間に読んでる他の本が充実してるのと、
自分の受け取り方も変化してるんだろうな、と思った。
せっかくだからまだ読んでない村上春樹作品も読んでみようかしら。


でも、もしかしたらこどもがアンパンマンを見るみたいに、
村上春樹が楽しいのは人生の一場面だったらどうしよう、
と思わなくもない今日の私です。
おもしろいおもしろくないの違いがなんなのか、たいへん気になる。


「おいしい料理」があるわけじゃなくて、
「おいしいと感じる料理とおいしいと感じている食べ手」がいるもんだよな、という話なんだと思うのよ。
こういうこと考えるのが超楽しいのはありがたい。


ちなみに、これを読む前に自分のブログの村上春樹ネタを探して
なか卯でランチを食べることについて語る時に僕の語ること - うさみ日記
とか見ておもろいなー、と思い出せたので、得した気分です。

庭山一郎さんの儲けの科学 The BtoB Marketingを読んで。読書感想文。

儲けの科学 The B2B Marketing(ザ・B2Bマーケティング)

マーケティングの基本」とか「ノヤン先生のマーケティング学」という本があるんですよ。
これからマーケティングに携わるお仕事をするとしたら最初に読んでほしいような本。


で、そのあと庭山先生はマーケティングオートメーションの本と、ABM(アカウントベースドマーケティング:対会社の視点で個人個人へのマーケティングをする)の本を出されました。
読みやすい基礎の本の後に、一部の技術や概念にフォーカスした本を出されたんですね。


で、今回のこの「儲けの科学」は、
BtoBマーケティング全般です。
しかも個々のトピックがなかなかに濃く奥深い。


**どんな本ですか?
・日本のBtoBマーケティングの今を俯瞰
・技術革新に乗り遅れている日本企業
・営業へのリスペクトとフロントライン再構築
B2B企業が投資すべきマーケティングナレッジ
マーケティングオーケストレーション
というような章立てです
全部入り感伝わるかしら


マーケティングオーケストレーションの章では
マーケティング力の底上げ、
CMOとCROに求められる要件と役割
マーケター育成と全体のオーケストレーション
といった、今後目指すべき道がまとめてあります。
いままでの本ではあまり触れてなかったPRM(パートナーリレーションシップマネージメント)についても語られてます。


料理本で言うなら、
「基本のキ」的な本の後に、
「揚げ物」「おもてなし料理」の本が出て、
今度は「家庭料理の全てと、世界に追いつく栄養ある食事」の本が出たような感じ。
いや、実際世界のよその国の栄養環境がどうなのかはしらんけど。


印象的なフレーズがたくさん
「日本企業の弱点はマーケティングだけなのです」
「日本のB2Bマーケティングのナレッジレベルは日本人が上げるしかない」
「モノ売りからコト売り、課題を解決した経験とスキルを持っています。この課題を一緒に解決しませんか?」
「今の社会人スキルで最も投資回収率が高いのはB2Bマーケティングです」


知識を与えてくれるだけでなくモチベートしてくれるあたり、さすがの実践者
シンフォニーマーケティングさんは1990年創業らしいですよ
そろそろ35周年
すごくない?
Windows95より前だよ


これを読むとマーケティングにおける課題がなんなのかが見えて、実践すべきことが見えてくる。というような本です。

 

あーでも

「儲けの科学」ってタイトルは出版社の売れるためのなにかなのかなー。

もっとふさわしいタイトルがあるように思います。

 

 


**こんな人に読んでほしい本でした
・マーケターさん
B2Bマーケティングに関わる人(事業会社、コンサル会社など問わず、営業さんもISさんもどんな職種の人も)
・これから社会に出る学生さん
・海外の競合とバチバチに戦う人

佐野眞一さんの「渋沢家三代」を読んで。読書感想文。

渋沢家三代 (文春新書)

私、むかし埼玉県深谷市というところに住んでたんですよ。
たしかそのころ駅前には「渋沢栄一翁生誕の地」とかの横断幕がかかっていたような。
理系の学生だった私はそれを見て「誰?」と思っていたものでした。


その後いろいろなところで名前を見かけて、
どういう人なのかうっすら理解しました。
銀行とか会社とか作った人ね、と。
なんだか、つかみどころがない感じだったからうっすら理解になった。


この本を読んで、なんでうっすらしか理解できなかったかわかった。
実績残しすぎ。ここからは敬称略で失礼しますが、
栄一、いろいろやりすぎ。


あのね、栄一ってば若い頃、
幕府、ぶっつぶすつもりだったらしいの。
ガイジン、やっつけようと思ってたらしい。
とりあえず高崎城乗っ取って足掛かりにしようと相談していた。
でも、従兄が全力で止めたからやめたのね。


これが1863年のこと。
この時に実行しちゃってたら死んでたかもしれん。


で、その後いろいろあって、一橋さんとこの慶喜さんの部下になるのよ。
水戸の一橋家。
徳川御三家の。


ちょまちょまぶっ潰そうと思ってた先方やーん、と思いつつ、
いろいろあって。
んで、仕事できる人だからバリバリやってたら、
1867年のパリ万博にいく慶喜さんの弟のおともの一団に加わることになって、パリに行く。
いろいろあって。


もちろん当時のことだから船に乗って何日もかけて行くんだけど、
その時の日記によるとパンにバター塗ってベーコン食ったり魚鳥豚牛羊などの肉食べたり、
「食後にカッフヘェーという豆を煎じた湯を出す。砂糖と牛乳を混ぜて飲む。たいへん、胸をさわやかにする。」とか書いてある。


日本ではまだ池田屋事件ー!!とかやってるくらいの時期に、洋上でカッフヘェーうめえ。と。
その頃はお財布担当で。


んでフランスにいる間に雇い主の幕府無くなっちゃったりして、帰ることになって。
国に帰ってみたらこんどは頼まれて明治政府のお金刷ったり、大蔵省的な。官僚になっちゃったりして。
いろいろあって。


こないだまでは幕府のボスのお財布担当だったけど、今度は明治政府のお財布担当やっちゃうよっ!つって。
(実際には言ってません)。
まあ、いろいろあって。


と思えば政府きっついわーって辞める、と思えば、
第一国立銀行やら商工会議所やら証券取引所作っちゃって。
あとは福祉系のとか大学何個かとか作ったり。
企業も500個くらい作っちゃったりとか。
なんでって、いろいろあって。


岩崎弥太郎さんとかと比べるとまあ欲がなくて、お金儲けをしていない。
もちろんそれなりにイイ暮らしはしてるんだけど。

「世界を良くしたい欲」が強くて私利私欲がなくて、経歴的には大金ボロ儲けしててもおかしくないのにそれをしない。


偉人。まさに偉人。


あ、んで、息子が人からは愛されてたけどわりと放蕩息子で頭を悩ませたり、
孫が継ぐかと思えば研究に勤しみすぎて財産使い果たしたり、とか。
そんな三代でした。


そこまで含めて愛せる三代。
発展途上の一国に1人はほしい人、そんな人です渋沢栄一


**どんな本かといいますと
上記のは骨格部分というかごく一部で、
こんな一家のドタバタコメディかっていうくらいの奮闘記です。
ドラマティックがとまりません。
まんがみたいな人たちです渋沢家。


実家が藍玉と養蚕の図太い農家で、
そろばん弾きまくって幕府で役に立つ。他国にも渡る。
農民から武士になって幕臣になって官僚になって起業家になって、という各パートに全て過去の経験がいきている。



いや、これ過去の経験だけでこんなにすごいことになる?
宇宙人説とか過去に転生した未来人説とかあるよ。
それなら理解できるなー
「官僚が転生したら幕末の農家の息子になったからちょっと経済を近代化してみた件」
とかだよきっとこの人。


**こんな人に読んでほしい本でした
渋沢栄一について知りたい
・日本の幕末前後あたりのおもろい本が読みたい
・武士武士してない歴史が知りたい
・「なんで超優秀な親の元でいまいっちょな子が…」みたいなことを思ったことがある

巽好幸さんの「美食地質学入門」と、稲垣栄洋さんの「世界史を大きく動かした植物」を立て続けに読んで。読書感想文。

「美食地質学」入門~和食と日本列島の素敵な関係~ (光文社新書)

世界史を大きく動かした植物

たまたま順番に読んだ2冊の本が、
それぞれ「日本の地理と食べ物」と「世界の歴史と食べ物」みたいな話だったんですよ。


美食地質学の方は、「私はマグマ学者である」って言う書き出しが印象的。
地球ができて46億年、日本列島ができたのが6億年前くらいらしいけど、その成り立ちや地殻・火山の話をして、そこから食べ物の話になる。


「餌が豊富な環境で、運動をたくさんして元気に育った生き物はおいしい」
「栄養豊富で清い土地で育った作物はおいしい」
みたいな前提に基づいていろいろな食べ物を語る語る語る。


瀬戸内海は広いところと狭く深いところの繰り返しがおいしい海の幸を育てている、とか、なぜそんな地形になったかとか。
日本海はもともと海ではなく、湖状の場所が外海と繋がってできている、カニが美味しくなったのは云々。


山脈沿いに蕎麦の美味しいところが多いのは海と山が近い地形で雨も多く水が磨かれて云々。
稲作をするために必要な水が豊富に供給されているのは山があるおかげで、それはプレートの活動が云々。


超たのしい。
この人と和食屋さんに行ってみたくなるでしょ?
うんちくがうるさそうだから嫌な人もいるかも?


で、これと同じくらいのタイミングで読んだのが
「世界史を大きく動かした植物」です。


コムギ、イネ、コショウ、トウガラシ、ジャガイモ、トマト、ワタ、チャ、サトウキビ、ダイズ、タマネギ、チューリップ、トウモロコシ、サクラ。
の14種類が「世界史を大きく動かした植物」として紹介されてます。


おもしろかったのが、コムギとイネの比較。
小麦を育てる畑は毎年毎年小麦を育てられないんですって。
畑が痩せてしまうから、年によって他の作物や野菜を育てて、畑が元気になったらまた小麦を育てる。
ヨーロッパあたりは広い土地があったからよかったけど、農作できる土地がすくなかったらきびしいよね。


それに対して日本の稲作は、山から川や地下水として田んぼに栄養が運ばれるから連作できる。
さらに、そもそも一粒のたねもみから取れる量が
米は10〜20倍で、麦は3〜4倍と、米のほうが3〜5倍くらい多いんだそうです。
麦は育てるために広い土地が必要になるけど、
米を水田で育てる方法はとても優れいてた。と。


でも、水が潤沢に必要だし、小麦よりも気象の影響も受けやすいから、どこでも育てられるものでもない。
地形的に雨が降りやすくて、地下水や川がいい感じに流れてないと作りにくい。


他にも、トマト、ジャガイモ、トウモロコシが海を渡って世界に行き渡る話もおもしろかった。
イタリア料理やインド料理はトマトを使うけど、昔はそれぞれの国にはなかった話とか。


18世紀まではイタリアにトマトはないんです。
イタリア伝統のトマトソースは1,700年よりも前にはなかったのかー、と思うとわりと最近な気もする。
果たして伝統とはいったいなんなのか。


そんなこんなな食糧的事情が、それぞれの国の文化や政治を作ってたりするのがおもろいよね。
あと、安定して食べ物が手に入っちゃうと色々な試行錯誤がされないので、人が狡賢くならないのかもなー、というのもアレです。


トウモロコシ、トマト、ジャガイモ、カボチャあたりはどれも南米原産だそうで、新大陸アメリカからヨーロッパにもたらされて世界中に広まったらしいのだけど。
新大陸の文明が滅ぼされてヨーロッパからの文化が逆輸入されてるのも不思議。


今は世界中で色々なものが作られるし食べられるけど、世界史上はまだ場所が限られてたのが面白いんだね。
その後流通が変わってどこでもなんでも運べるようになる。
すごい世の中だよね。


カレーライスが食べられるのは文明の発展のおかげです。
ありがたやありがたや。


**こんな人に読んでほしい本でした
・社会の授業が好きだった人
・食べ物の話の本が好きな人
・普段触れないけど身近な話に触れたい人

言葉にできない想いは本当にあるのか を読んで。読書感想文。

言葉にできない想いは本当にあるのか (単行本)

生きているといろんな場面で気になる言葉ってあるじゃないっすか。
誰々さんが言ったあの言葉とか、
なにかの本に書いてあったこととか、
ラジオから流れたあの話とか。



そんなのってすぐに目の前から流れて行ってしまうのだけど、
いつもよくよく考えてるひ人は、その言葉から発想を広げていく。
流れていくのをわざわざ拾い上げて見つめて見つめて見つめる。
それを文章にまとめたような本です。

 


そんな話を読むのはとても面白い。
それはそれは面白い。
何かのことを大好きな人からその「大好きなもの・こと」の話を聞くのが超面白いように。

 


で、この本はバンドマンとしてデビューして、その後作詞家・音楽プロデューサーとして活躍している
いしわたり淳治さんという人が書いた本です。

 


言葉について日常的に考えている人が、日々の中で触れた言葉について思ったことを書いている。

 


ものの見方が違う。
ものを見る角度も違うし、ものを見る深さも違う。
私が256色の平面で世界を把握してるのに、
すごい人は3Dスキャナーで全方位をリアルタイム分析しながら見た上にレントゲンと心電図も撮っているくらい深く見ている。

 


たとえば一番最初の文は瑛人さんというシンガーソングライターの「香水」と言う曲の話。
あれあれ、あのドルチェアンドガッバーナのやつ
ついつい「どーるちぇあーんどがっばーなーのあの」のとこがテンポ良くて歌いたくなるよねーみたいなことを言いたくなるけど、
いしわたり先生は「五感のどれに作用するか」みたいなことに注目する。

 


視覚83%、聴覚11%、嗅覚3.5%、触覚1.5%、味覚は1%
と言うのが人間の知覚の割合、というたまに聞く研究結果があるけど、この曲は「香水」が嗅覚を刺激するし、「ドルチェアンドガッバーナ」が聴覚を刺激するワードで、それがこの曲を特別なものに変えている、とか。

 


「フィクションで歌詞を作る人には視覚中心のものが多いけど、実体験に基づく歌詞作りをする人には視覚以外が多い」みたいな話もとても興味深い。
見てきたような話、というのは作れるけど、
嗅いだような、触ったような、聴いたような話ってのは難しいのかもね。

 


**どんな本ですか?
日常的に言葉のことばっかり考えている作詞家が、
日々気がついたことを書いた連載をまとめた本です。

 


**こんな人におすすめしたい本です
・言葉に興味がある人
・言葉に興味がある人に興味がある人
・歌詞づくりのセンスみたいなものを学びたい人
・日々言葉を使う人

 

ちなみにネットの連載をまとめた本なので、

実はオリジナルがここ大ヒット中の瑛人『香水』 ポイントは嗅覚と聴覚を刺激する歌詞? | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]にあったりする