うさみ本棚

うさみの本棚です。おすすめされた本を読みますので、おすすめ教えてください!

イカの不思議 -季節の旅人 スルメイカ-を読んで。

イカの不思議 季節の旅人・スルメイカ
イカ好き?
おれ?イカ?好きさ。
新宿とかにあるイカ天国っていう居酒屋あるじゃない?
あれ、だいぶ幸せ。
もちろん人にとっての天国は、イカにとっての地獄だと思うけど。


さて、そんな私のイカ好きがレベル「3」だとすると、
ここにイカ好きレベル「大天使」を差し上げたい方がいらっしゃいます。
この本の著者である、
函館市国際水産・海洋総合研究センターの桜井 泰憲教授です。


以前からいろんなとこに書いてますが、
私、何かを熱烈に愛している人が、
その愛している対象の話を聞くのが大好きです。
これはそんな気持ちが味わえる良書でございました。


先生の研究内容に関しては
桜井 泰憲 | 函館市国際水産・海洋総合研究センター
こちらを参照してください。

で?どんな本なの?

イカ好きが、
イカのことを研究しまくり、
その研究結果を一冊にまとめた本であります。


イカの視力がとてもいいことをはじめ
イカの身体に関することはもちろん、
イカをどのように研究しているかといったことや、
イカに至る進化の過程や、
イカが空を飛ぶ方法と飛距離(若いスルメイカが30mくらい飛ぶそうです)
スルメイカが1年で一生を終えることなどなど。


イカです。
イカづくし。
イカ辞典。


中でもおもしろかったのは、
上にも書いたイカの飛行方法の話と、
1年で死んでしまうこと。


飛ぶのは、
泳いで排水管から排水して水面に飛び出して、
エンペラと足(及び足と足の間の膜)を広げて
30mくらい飛ぶそうです。
ヤバすぎる。
見たくなるよね?



まあ、写真なんで実際何秒くらい対空するのかは
知らないけど、すごい。すごすぎる。


あとね、
1年で死んじゃうんだって。
スルメイカ


大昔は貝類と同じ先祖から進化したのに、
方や何年も何年も砂の中でじっとして過ごしている貝と、
方やすさまじいスピードで移動できるのに1年で死んでしまうイカ。
もうね、人生を考えずにはいられないじゃないですか。


ほんと言えばすごいスピードかつ長生きしたいとこだけど、
どうやら生き物ってそうはできてないんだよね。
ほら、なんとか言うサメがすーごい長く生きるけど、
超ゆっくりしか動けない話もあるし。


でもさ、そうはいいつつ、
何年か前にニュースになったダイオウイカは
どう見ても1年で死ぬ感じじゃなかったもんね。
それも進化なんだろうね。
生き物ってほんと不思議。

こんな人に読んで欲しい本でした。

・生物を学んでいるが、この本は読んでない人
・子供のころの好奇心を失ってしまった大人
・好奇心あふれるこども(漢字が読めるようになったらね)
・イカ好きな人
イカ天国好きな人
・スルメ好きな人
・肴は炙ったイカでいい人
・しみじみ飲めばしみじみと
・ふだん読まない本を読んでみたい

ということで、
2018年の私事のこととか仕事のこととか - うさみ日記
にも書いたんですが、今年最初に読んだのはこの本でした。
おすすめしてくれた人には、なんでおすすめしてくれたのかわかんないけど、
感謝しております。

今年もうさみに読ませたい本、
募集してます。
皆さんよろしくお願いします!

いま世界の哲学者が考えていることを読んで。読書感想文。

いま世界の哲学者が考えていること
私は哲学について全く詳しくない。
哲学者の名前もたいして知らないし、
若い頃文学青年で重い哲学書を開いて自問したこともない。
頭イイ人が人生とか存在とかについてずーっと考えてる学問なことは知ってる。
ほら、工学部電子工学科ですからね。


正直、物理学より理解したいという願望がない。
でもこの本に興味を持ったのは、
哲学者の本じゃなくて
考えていることの本だから。


なにかに対して熱烈な愛や執着を持ってる人というのは
漏れなくおもしろい。
と前から思っている。


プロレス観戦もおもしろそうだけど、
プロレスファンが練りに練った
(というか自然と練れちゃった)
プロレスの話を聞くのは楽しい。


同じように、何を見ても何かを考えたり
何を見ても何かを思い出している哲学者さんの話も
おもしろかんべー、と思って、
この本を読んでみた。


初手から哲学的思想を学ぶ気も哲学者の名前を覚える気もなく読むと、
この本は「未来本」の仲間になる。
IT、資本主義、バイオテクノロジー、格差、テロ、宗教などなど、
いろんなテーマについて
「◯◯センパイいるじゃないっすか?
 こんなこと言ってたんすよ」
と教えてくれるのだ。


もちろんこっちは◯◯センパイのことなんて知らんけども。

どんな本なの?

第一章は、ここんとこの哲学と哲学者の紹介です。
第二章以降はいろんなテーマを取り上げる。
上にも書いたけど、ITから宗教まで。


例えばさ、
「You、不老不死になったらどうすんの?」
「クローン人間て全部おんなじになんの?ヤバくね!?」
みたいな、ね。


「悟空とスーパーマンどっちが強ぇ?」
みたいな話をですよ、いい大人が、
しかもむっちゃくちゃ勉強している大人が考えるわけですよ。
そりゃ楽しいよね。


一神教は神が心のなかにいて、
 多神教は外にいる」
みたいな話とか。
居酒屋でエイヒレかじりながら話したいテーマだよね。


「え?ちょ待って?
 地球環境守るなら人間根絶やしにしたほうがよくね!?」
みたいなスゴイこと言い出すセンパイもいたりして。
そりゃあもうてんやわんやのしっちゃかめっちゃか。
ナレーションは広川太一郎さんみたいな状態に。


あ、でもほんとはそんなに軽くなくて、
しっかりずっしり重い文体の本なので、
おもんないっつって怒んないでね。


つまるところ、
哲学に詳しい人にはたぶん物足りない内容だし、
各項目それぞれのプロフェッショナルからすると
「まあそりゃそうだけど、そこ取り上げる?」
みたいな内容なのかもしれんけど、
「さわり」の部分を味わうにはいい本なんじゃないかと思います。

こんな人に読んで欲しい本でした

・哲学、学びたい
・世の中どんなことになってんのか知りたい
・不老不死になれるなら死んでもいい
天津飯みたいに腕が四本あったら便利かも、と思
・よその国の人から宗教のこと聞かれて「えっ…」ってなったことがある
・自分のクローン欲しい
・クローン兵団を作って宇宙を征服するつもりだ
池上彰さんの番組とか、けっこう好きだ
環境保護ってなんでするんだっけ?と思うことがある

<インターネット>の次に来るものを読んで。読書感想文。

〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則

実は、
・なんだか話題の本である
・将来予測の本である
・WIREDの創刊者が書いた
という話だったので、
期待を上げすぎてしまっていたのか、
なんかちょっとアレな読後感になった。


たぶん、未来というよりも今の話っぽかったからかな。


現時点でのまとめというか、
「今こんなのあるよね」という点に関しては
しっかりまとまっててイイ本だったと思うし、
それを元にして、キーワード毎に分類していった進め方もいいと思う。


自分の中で「未来が書いてある本」みたいなつもりで読み始めちゃったので、
「IT界隈って今こんな感じで、この先こんな感じ」
という内容のこの本がどうもなじめなかった。


これだったら、ミチオ・カクさんの
「2100年の科学ライフ」の方がよくね?
って思ってしまったのだった


だってあっちはナノテクとかバイオとか宇宙の話もあるし
エネルギーの話もあるし。
300人だかの科学者にインタビューしまくって
書き上げた本だもの。


そう思うと未来本の内容って
・内容の濃さ
・見通す未来の遠さ
みたいなものが尺度としてあるのかもな、
とも思った。
読みやすさでは今回のの勝ちだけどね。

こんな人に読んで欲しい本でした

・タイトルからしてどんな内容か気になる
・インターネット大好きだけどまだ読んでない
・今時のwebサービス屋さんをたくさん知りたい
・キーボードを打つのもめんどうだし、ヘイシリとか言うのもめんどくさい
・未来が知りたい

伊藤計劃さんのThe Indifference Engineを読んで。読書感想文。

The Indifference Engine (ハヤカワ文庫JA)

癌で亡くなったSF作家、伊藤計劃さんの小説です。
長編はもう本当に本当に作り込まれたものがあるので、
そっちはそっちでぜひ読んでほしいんですが、
これは短編集です。


天才画家のラフスケッチみたいな短編集。
どこかに矛盾があってもおかしくないくらいの、素材に近い状態。
大人気連載まんがが始まる前の短編読み切りを見てる気分。
ワンピースが始まる前のROMANCE DAWNみたいな。

どんな本なの?

007の裏側を描くストーリーを書いてみたり、
メタルギアソリッドが好きすぎてアナザーストーリーを作ってみたり、
近未来の戦後の元少年兵の苦しみを描いてみたり。


うん。
なんというか、完成品の長編を読んでいた時は
「よくこんなの書けるなー」と思っていました。
でも、いきなりその高みにいたわけではなく、
ちゃんと助走があったんだね。


Disney Pixarの映画を作る時のブレイントラストってミーティングのように、
「最初はつまらないものをどんどん磨き上げていく」過程がちゃんとあるんだなー、
と思う。


とはいえ、ラフスケッチの段階でもうすでに
「こんなの、よく書けるな…」と思わされるような文章です。
イデアもいいし、描き方/見せ方も大好き。
いきなりまんががはじまったりするのは驚いたけどね。


上に書いた少年兵の話なんて、
ほんとにこの先ありそうな話なんだよね。
がっつりネタばれしない程度に書くと、
「もしも、戦後に敵を敵として認識できなくなる技術があったら」
みたいなテーマ。


幼いころから根絶やしにするべし!と教えられた敵を
敵として認識できなくなったら平和は来るの?
みたいなテーマ。
おもしろおそろしい。


たぶん、サビを思いついてからAメロBメロを作るミュージシャンみたいな
人だったんだろうなあ、と思うんです。
イデアありきで膨らませて、いらない部分を削っていって。
ああ、ほんと、新刊が読みたいけど読めない作家ランキングのかなり上位にいます。
伊藤計劃さん。

こんな人におすすめしたい本でした

伊藤計劃ファンだけどこれは読んでない
・読んだけど内容が思い出せない
・いろんなSFのアイデアをちゃちゃっと見たい
メタルギアソリッドが大好き
・007シリーズが大好き

ランチのアッコちゃんを読んで。読書感想文。

ランチのアッコちゃん (双葉文庫)
前に読書感想文を書いた「心のチキンスープ」っていう、
アメリカのいろんなほっこりするイイ話を集めた本があるけども、
あれを和風だし味にしたような、
ほっこりするお話多数。


体が昆布だしをもとめる時があるんですよ。
そんな時は大きな鍋にぬるま湯を張ってだし用の昆布を入れて、
一晩なり一日なりそのままにしておきます。
翌日昆布を取り出してなにかの料理に使います。


今の季節なら鶏肉や根菜が入った鍋にしてもいいし、
豚肉と大根とごぼうを使ったカレーもいい。
魔改造的にYOUKIの顆粒チキンスープを入れて中華スープにしてもよい。
貝のみそ汁を作るベースにしてもおいしい。


どれも腹の底からあたたまるような味。
グルタミン酸イノシン酸コハク酸
うまみ成分が全身にしみわたるような味。


かなり話がそれましたが、
この本は昆布だしが全身にしみわたるみたいな本です。
っていう話がしたかったんです。


どんな本なの?

独身都会暮らしで出版社で派遣事務の仕事をしている主人公が、
最初は怖いと思っている部長との距離がだんだん縮まっていく。
そのきっかけになったのは「ランチ」。
主人公の作るお弁当と、一週間ローテーションの部長のランチが交換され、
見えなかった世界が広がっていく。


数km以内に、
自分が知らない世界があって、
自分とは違う価値観の人がいて、
ものの見え方が変わると世界が変わる。


ものの見え方が変わるのは、
いつもの自分のデスクではなく、
わざわざ行かないといけない場所。
ちょっと遠くても、ちょっと怖くても、
行ってみないとわからないことがある。


飲食店の開店にまきこまれる話や、
ビルの屋上にビアガーデンを作る話や、
昔の恩師とともに、高校生を追いかける話などなど。
一話一話が短いのでサクサクサクサクっと読める。


魅力的な主人公ではない。
身近な身近な主人公。
その主人公が変わっていく様を見られるから、
自分も変われる、と思える本。

こんな人に読んでほしいような本だったです

・仕事かったるい
・仕事つかれた
・なんかだいたい一通りわかってきてマンネリっている
・今日も明日も昨日と同じことの繰り返しだ夢も希望もない
・職場に好きな人がいる
・職場に嫌いな人がいる
・毎日の食事が楽しみだ
・毎日の食事が楽しみではない
・たまにはいつもと違う道を歩きたい

パウロ・コエーリョさんの「アルケミスト―夢を旅した少年」を読んで、読書感想文。

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

これは本当に本当に素晴らしい読書でした。
こんなにいいものが600円くらいで手に入るなんて、
本当に本当に素晴らしいな、と思う。


たまーに、
読んだ読まないで
人生がかわっちゃうような本ってないですか?


おおげさ!
と思うかもしれないけどんなこたぁない。
いい師匠との出会いが人生を変える、
というのは、誰だって共感できるところだと思う。


本というのは紙の束に見えるけど、
それを書いた人の一側面をまとめたものだから。
その人との時間を楽しむように本を読みましょう。


その「師匠」というのは例えば、
実際に出会った職場の上司かもしれないし、
たまたま働いたバイト先の友達かもしれないし、
一冊の本を通して出会う著者かもしれないし、
鈴鹿8耐のテレビ中継で見たレーサーなのかもしれない。


実際の人として対面できたほうが
本当は良いのかもしれない。
でも、人によっては対面せずに、
一冊の本という形で目の前に
「師匠」があらわれるんですよ。

どんな本だったの?

1988年に発行されたものらしい。
なんで誰も教えてくれなかったんや、
というくらいイイ本。


世界を旅したブラジル人が書いた物語。
スペインの羊飼いがエジプトのピラミッドまで旅する物語。
決断。ビギナーズラック。苦難。立ち止まることの誘惑。
大事なのはゴールじゃなくて、その過程。


大きな目標を持ち、
日々の気づきを大切にする。
その中でいい師匠と出会って、
いくつもの教訓を得て成長していく。


人の話も聞きながら、
自分にできるかぎりのことをしていく。


時には失敗し、
本当に本当に凹む。
でもその度に起き上がり、
歩き始める。


ダメージがないわけはない。
ダメージをスルーするのでもなく、
立ち向かって乗り越える。
不幸を不幸として受け止める。


こう書くとむっちゃっくっちゃっ説教臭いけど、
これがほんとにスルスル読めちゃうストーリー仕立てになってるんですよ。
ほんと、スルッスル読めちゃう。

こんな人に読んで欲しい本でした

・人生変わっちゃうかも知れない本を読みたい
・挑戦をするつもりだ、誰かに背中を押してほしい
・すぐに挑戦をするつもりはないが、いつかする時の心構えをしたい
・好きな言葉は「人事をつくして天命を待つ」だ
・乗り越える話が読みたい
・砂漠の物語が読みたい
・砂漠のオアシスが出て来る物語が読みたい
・宗教臭すぎないスピリチュアルな話が読みたい


君も読もう。
是非。

調理場という戦場を読んで

調理場という戦場―「コート・ドール」斉須政雄の仕事論 (幻冬舎文庫)
「がむしゃら」って言葉があるじゃないですか。
あれがぴったりくるような、
料理人奮闘記。
今は三田にある「コート・ドール」というフレンチレストランのオーナーシェフさん。
斉須政雄さん。


名前で検索すると書籍やお店の情報にまぎれて
掃除は、自分をゼロに戻してくれる座標軸のようなもの
なんていう記事が出てきます。
一日四回しっかり掃除するレストラン。
素晴らしい。


漠然と掃除するんじゃなくて、
拭き方や手順が決まっている掃除。


どんな本なの?

一流のフランス料理人を目指すために、
フランス料理の三ツ星レストランで働きたくて、
フランスに渡る。
文化の違いに戸惑いながら、戦いのような日々を過ごす。


いろいろなレストランを渡り歩きながら
いろいろなことを学んでいく。
最初はフランス語もたいしてわからない中で、
見て動いて悩んで学んでいく。


最初は朝から晩まで雑用かと思いきや、
突然ソースの担当になったり、
移った先の店が合わなければすぐ次に行ったりもする。
かと思えば、素晴らしい師匠との出会いが待ち構えていたりもする。


働くお店も一つ星→二つ星→三つ星→新規に始めた店でオープン2年で2つ星ゲット!
みたいな、名も実もあるお店多数。
そのくせ、それぞれの店はそれぞれまったく違う。
雑多で効率的ではないところもあれば、
清潔で整然としたところある。


最初はわからなかったフランス語は
いつしか話せるようになっているし、
部屋も狭い屋根裏からどんどん広くなって
人も呼べるようになる。


いっしょに働いていた人と新しいお店も出した後には
そこでも星を獲得するような経験もする。
昔はフランス語なんてわからなかったし、
料理もほとんどわかったなかったはずなのに。


今現在何ができて何ができないかじゃないんだよね。
今何をするか。
いつかしたいことはなんなのか。


意思の力と実行力。
偉大な2つの力ですね。

どんな人に読んで欲しい本だった?

・フランス料理の料理人になるためにフランスに行きたい
・一流になるための修行がしたい
・前のめりに生きる人の物語が読みたい
・あきらめなかった人の物語が読みたい
・言葉なんてわからなくてもなんとかなる、と信じたい
・料理人の仕事って料理を作ることじゃないの?と思っている
・人からほめられないのは周りの人の見る目がないからだと思う