うさみ本棚

うさみの本棚です。おすすめされた本を読みますので、おすすめ教えてください!

巽好幸さんの「美食地質学入門」と、稲垣栄洋さんの「世界史を大きく動かした植物」を立て続けに読んで。読書感想文。

「美食地質学」入門~和食と日本列島の素敵な関係~ (光文社新書)

世界史を大きく動かした植物

たまたま順番に読んだ2冊の本が、
それぞれ「日本の地理と食べ物」と「世界の歴史と食べ物」みたいな話だったんですよ。


美食地質学の方は、「私はマグマ学者である」って言う書き出しが印象的。
地球ができて46億年、日本列島ができたのが6億年前くらいらしいけど、その成り立ちや地殻・火山の話をして、そこから食べ物の話になる。


「餌が豊富な環境で、運動をたくさんして元気に育った生き物はおいしい」
「栄養豊富で清い土地で育った作物はおいしい」
みたいな前提に基づいていろいろな食べ物を語る語る語る。


瀬戸内海は広いところと狭く深いところの繰り返しがおいしい海の幸を育てている、とか、なぜそんな地形になったかとか。
日本海はもともと海ではなく、湖状の場所が外海と繋がってできている、カニが美味しくなったのは云々。


山脈沿いに蕎麦の美味しいところが多いのは海と山が近い地形で雨も多く水が磨かれて云々。
稲作をするために必要な水が豊富に供給されているのは山があるおかげで、それはプレートの活動が云々。


超たのしい。
この人と和食屋さんに行ってみたくなるでしょ?
うんちくがうるさそうだから嫌な人もいるかも?


で、これと同じくらいのタイミングで読んだのが
「世界史を大きく動かした植物」です。


コムギ、イネ、コショウ、トウガラシ、ジャガイモ、トマト、ワタ、チャ、サトウキビ、ダイズ、タマネギ、チューリップ、トウモロコシ、サクラ。
の14種類が「世界史を大きく動かした植物」として紹介されてます。


おもしろかったのが、コムギとイネの比較。
小麦を育てる畑は毎年毎年小麦を育てられないんですって。
畑が痩せてしまうから、年によって他の作物や野菜を育てて、畑が元気になったらまた小麦を育てる。
ヨーロッパあたりは広い土地があったからよかったけど、農作できる土地がすくなかったらきびしいよね。


それに対して日本の稲作は、山から川や地下水として田んぼに栄養が運ばれるから連作できる。
さらに、そもそも一粒のたねもみから取れる量が
米は10〜20倍で、麦は3〜4倍と、米のほうが3〜5倍くらい多いんだそうです。
麦は育てるために広い土地が必要になるけど、
米を水田で育てる方法はとても優れいてた。と。


でも、水が潤沢に必要だし、小麦よりも気象の影響も受けやすいから、どこでも育てられるものでもない。
地形的に雨が降りやすくて、地下水や川がいい感じに流れてないと作りにくい。


他にも、トマト、ジャガイモ、トウモロコシが海を渡って世界に行き渡る話もおもしろかった。
イタリア料理やインド料理はトマトを使うけど、昔はそれぞれの国にはなかった話とか。


18世紀まではイタリアにトマトはないんです。
イタリア伝統のトマトソースは1,700年よりも前にはなかったのかー、と思うとわりと最近な気もする。
果たして伝統とはいったいなんなのか。


そんなこんなな食糧的事情が、それぞれの国の文化や政治を作ってたりするのがおもろいよね。
あと、安定して食べ物が手に入っちゃうと色々な試行錯誤がされないので、人が狡賢くならないのかもなー、というのもアレです。


トウモロコシ、トマト、ジャガイモ、カボチャあたりはどれも南米原産だそうで、新大陸アメリカからヨーロッパにもたらされて世界中に広まったらしいのだけど。
新大陸の文明が滅ぼされてヨーロッパからの文化が逆輸入されてるのも不思議。


今は世界中で色々なものが作られるし食べられるけど、世界史上はまだ場所が限られてたのが面白いんだね。
その後流通が変わってどこでもなんでも運べるようになる。
すごい世の中だよね。


カレーライスが食べられるのは文明の発展のおかげです。
ありがたやありがたや。


**こんな人に読んでほしい本でした
・社会の授業が好きだった人
・食べ物の話の本が好きな人
・普段触れないけど身近な話に触れたい人