うさみ本棚

うさみの本棚です。おすすめされた本を読みますので、おすすめ教えてください!

三体を読んで。読書感想文。

三体

SF、なめてた。
SF、限界があると思ってた。
SF、大好きだけど、行き止まりがあると思ってた。
SFには限界なんてなかったぜ!それでは聞いてください次の曲!三体最高!


と、熱いMCを繰り広げたくなってしまうほど良い小説でした。
三体。


レビューでは低評価な人もいます。
登場人物の名前が覚えにくいとか、
前半わかりにくいとか、
後半もなにがなんだかとか、
科学的検証が弱いんじゃないかとか、
ストーリー飛び過ぎとか、
荒削りだとかなんだとか。


そうなんです。
これ、万人におすすめする小説じゃない。
上に書いたようなつっこみどころが多数あるんです。
でもね、それらを全部受け入れて、良い小説でした。


まだ読んでない人のためにネタバレしないように愛を語るけれども、
これものすごく良くないですか?
たしかに整ったものではないんだけど、
ものすごく良くできているし、
これだけ複雑なものをよく作り上げたな、と感じる小説でした。


読めてよかった。


難を言えば、3部作の1作目だって知らずに読み始めちゃったので、
最後「えっちょっとまってなにこの引き終わりな感じー!」
と思ったことくらいです。
続きが早く読みたい!

こんな人に読んでほしい小説でした。

・全SFファン
・全ゲームファン
・全物理学ファン
・全未来に希望を持つみんな

英国一家、インドで危機一髪。を読んで。

英国一家、インドで危機一髪 (角川書店単行本)


NHKでアニメ化もされた「英国一家日本を食べる」のマイケル・ブースさんですよ。

マイケルとリスンとアスガーとエミルの一家。
フランスで料理修行して、日本に来て食文化に驚きまくって、
で、次がインドです。


「中国でも良かったけど」と本人は言ってるけど、
インドであることに意味がある。
自分探しとかではなくて、依存から抜け出すきっかけとして。


以下、若干のネタバレを含みます。


飲酒量が増えていて軽度の中毒っぽくなってたから、
奥様のリスンさんがその悪い流れを断ち切ろうと、
インドで本気のヨガをやらせる、というのが骨子。


前半はふつうにグルメとか観光地とかの話なんだけど、
後半は日々ヨガに取り組み、依存症から抜け出すストーリーで、
これがむっちゃグッとくる。
グルメ以外もナイス文章書くなー。


なんというか、皮肉むっちゃ多い。
イギリス紳士的な皮肉むっちゃ多い。
どんなに厳しい状況に置かれようと
皮肉とユーモアを忘れないのが英国紳士。


一家全員お腹を壊しているときも、
自分のライターとしての経歴を卑下するときも、
ヨガで体がバラバラになりそうなときも、
健やかなる時も病めるときも、
とにかく皮肉を忘れない。


あと、数ヶ月インド滞在させられて順応していく子どもたちがすごい。
どこに行ってもしばらくすると友達ができている。
言葉が通じるかとか、そういう問題じゃないんだなー。
ブース家の目を通して世界を見渡せる貴重な一冊。


**こんな人におすすめしたい本でした
・インドに行ってみたい
・世界の食を知りたい
・ヨガって本当に健康に効果ある?というのが知りたい

 

「ぼぎわんが、来る」を読んで。読書感想文。

ぼぎわんが、来る (角川ホラー文庫)

こええよ。
こわかったよー。
怖いのが苦手な人にはおすすめしません。


友達が貸してくれて読んだ本。
「ホラーとかだいじょぶならおもしろいと思う」
と。
うん。読めなく無いので読みます。
人からおすすめされた本。


こええよ。


ホラー映画とホラー小説の頂上決戦をするとしたら、
入ってきそうな一冊。
いろいろな怖さのバリエーションが出てくる。
怖さのデパートです。


触感からくる生理的気持ち悪さ
暗闇を恐れる本能から来る怖さ
痛みに対する恐怖
守られていると思っていたのに裏切られる怖さ
人の業の恐ろしさ
人が人を恨むことの怖さ


いろんな怖さのリストを作って、
それを順番に出してみた、
みたいな怖さの連続です。
いろんな方向の怖さが来ます。


「洒落怖」って言葉があるんだとこの本のレビューで知りました。
しゃれこわ。
洒落てて怖いわけではなく、
洒落にならないほど怖い話の略らしい。


amazonのレビューとか見てると
前半良かったけど後半失速したよねー、とか、
終盤ラノベチックになったのがどうもねー、
みたいな意見もちらほら。


ガチホラー勢はもっともっと最初から最後まで怖さの大波小波を浴びたいんでしょうね。
こええよ。
怖さを疑似体験したい人の心がこええよ。


あ、でも、まんが化されたり映画化されたりという出版後の展開が
すごかった小説だから、怖さ一辺倒よりも、
上記のガチホラー的にはいまいちな点が
映画やまんがの原作にちょうどよかったのかもね。


ちなみに、この本のレビューを書いている間に、
数回パソコンがなんの前触れもなく停止しました。
こぇぇょ。

こんな人におすすめしたい本でした

・ホラー小説好きだけどこれは読んでない
・怖い文章を書きたいから、怖い文章の勉強がしたい

西加奈子さんの「あおい」を読んで。読書感想文。

あおい (小学館文庫)

西加奈子さんは、好奇心旺盛なこどものような奔放な語り手でありつつ、
熟練の作詞家のような言葉選びをする、
とても素晴らしい作家さんです。


というのが、読後の感想です。
ちなみにまだこの「あおい」一冊しか読んでいない。


あ、ちがう、この前に
「ダイオウイカは知らないでしょう」を読みました。
西加奈子さんとせきしろさんが短歌を作った本。
あれを読んで興味を持って、本職の方も読みたくなったのだった。


せきしろさんの凪を感じるような短歌もすばらしかったんですが、西さんの短歌の密度とか厚みみたいなものがものすごかった。
何かしら言う時
「すごくたくさんのことが言いたいのに我慢して絞り込んで話す人」っているよなーと思うんです。
その、狭いところに閉じ込めた気体みたいな温度と密度の高さ。


んで、この西さんの場合はその熱が高いのと、
表現とか文章が、なんというか、なんというか、レベル高い。
一見荒く見えるんですよ。
でも、離れて見ると荒々しいタッチなのに、
実は何回も何回も繊細に絵の具を塗り重ねた絵のような物語。


「え!?そこ軸にしないの!?」
っていうようなできごとをあえてスパイス程度に使って、
スピードを落とすことなくグイグイとストーリーを進めていく。


人生において過去の事件なんて、
過去のこと、過去のできごとと本人は割り切ってるんだけど、
それが後の人生や人格に大きく作用する。
そんなことをうまく表現できる、時間の使い方がすごくうまい作家さんなんだと思います。


たぶん西さんが「ももたろう」をリライトしたら、
「ももたろうが家に来る前のおじいさんおばあさんの感情」とか
「退治される鬼が都を襲った後の気持ち」
みたいなことまで描ききると思う。
しかも2行で。


短い文章で奥行きが生まれて、
物語のテーマが「勧善懲悪」から「命」に変わるような、
そんな書き方のできる方なんじゃないかなー、と思います。

こんな人に読んでほしい本でした

・物語を読みたい!
・リアルな感じの小説が読みたい!
・現実離れしていない小説が読みたい!
・ずっとキラキラしすぎてないけど時々輝くような小説が読みたい!
・ロマンスじゃないラブが読みたい!

江國香織さんと森雪之丞さんの「扉のかたちをした闇」を読んで。読書感想文。

扉のかたちをした闇
言葉のプロ二人が「詩」というルールの元に行う天下一武道会勝戦みたいな一冊。
いや、そんな殺伐としたものではなくて、
やわらかい文章と慈愛に満ちた詩集なんですけども。


どのあたりが天下一かというと、
言葉選びのセンスやその出てくる順番です。
高度な技の応酬すぎる。


鳥山明先生がヘタッピまんが道場で、
「まんがだったらなんでもできる。
 岩も割れるし空だって飛べる」
的なことをおっしゃってたんですが、
文章を矛盾したまま届けられる、
という点では、詩の自由度もかなりなものです。


森雪之丞さんなんて公式サイトのタイトルからして、
瞳を閉じて青空を見ろ。ですからね。詩人恐るべし。
そんな詩人が時に矛盾するような言葉のセレクトをしたり、
様々な技を駆使してセンスハンパねー詩をガンガン繰り出すんですよ。


そうするとそれを受けて江國香織さんが、
さすがの小説家っぷりを発揮して、
「人の業」「女の性」みたいな大技で封じ込めたりする。


雲の切れ間から届くような詩と、
目の前の女性から届く言葉のような詩。
どちらも素晴らしい。

こんな人に読んでほしい本でした。

・作詞家森雪之丞ファンで、まだこの本を読んでいない
・小説家江國香織ファンで、まだこの本を読んでいない
・小説とかドキュメンタリーとか読み疲れた
・味気ない本ばっかりだと栄養がかたよるなー、と思っている

白と黒のとびらを読んで。読書感想文。

白と黒のとびら: オートマトンと形式言語をめぐる冒険
や、これはおもしろい、けど万人におすすめしない。
オートマトン形式言語といった情報処理の基本になってるようなことを、
ストーリー仕立てでまとめてみた、みたいな、ユニークな本。


計算機の構造を「妖精や小人の遺跡とそのロジック」に落とし込んで、
魔術師の弟子がそのロジックを理解していく、
という展開をする。


魔術師の弟子は未熟だけれど、
ピンチに陥ったり徐々に成長したりしながら、
物語を先へ先へと進めていく。
と、ロジックに対する理解もだんだんできていく。

こんな本でした。

○と●の2種類の扉がある遺跡。
その遺跡から抜け出すにはその遺跡の法則を見抜いて、
順番に扉を開かないと出られない。
間違えた扉を開くと元に戻ってこれないこともあるし、
命を失うこともある。


そんな遺跡でも、
図に書いて理解すると
法則に基づいていることが見えてくる。
その法則を使ってひとつひとつの遺跡をクリアしていく。


遺跡をクリアする理由はそれぞれで、
師匠からの指示や、
人助けのため。
一つずつ遺跡を理解してクリアするごとに、
主人公が成長していく。

こんな人に読んでほしい本でした。

オートマトンの勉強してる
・これからオートマトンの勉強する
・「器械による計算」の基礎みたいなものが知りたい
・なにか自分の知らない分野のことを読みたい

ラプラスの魔女を読んで。読書感想文。

ラプラスの魔女 (角川文庫)

一気に読んじゃう系の本。
空想科学ミステリーって感じ。
ネタバレになるので細かいことは書かんけども。


登場人物の魅力というよりも、
心情とか、「誰が何に執着するか」とか「業」みたいなものが
流れ続ける低音のようにテーマになってるんだよね。
これはこの著者さんの特徴なんだろうか。


「業」を検索するとこんな説明が出てくる

広くは、人として生まれついて、不合理であるとわかっても行ってしまう行為を指します。
自業自得(じごうじとく)、罪業(ざいごう)、など仏教の外でも使われます。
また、腹が立つこと、怒りの心を意味することもあります。
業腹(ごうはら)、業(ごう)を煮やすなどです。

出展:業の意味とは?業とは何か、解説いたします|終活ねっとのお坊さん


誰だってそうだけど、利益で動くだけじゃなく、
不合理なのにやめられないことってあるもんね。
トリックとか科学云々とかみたいなものはただの味付けで、
人の業が描かれてる。

どんな本でした?

お金、知識、復讐心、好奇心、研究対象に対する執着。
いろいろなものに操られた人々が織りなす物語。
執着の対象を叶えた時って、
最後に残るのは虚しさなんじゃないだろうか。


でも、そんなにドギツイ表現もなく、
なんというかクリーンな物語だと思う。
表現が軽くてスルスルと滑るように読める。

こんな人に読んでほしい本でした

東野圭吾ファン
櫻井翔ファン(映画に出演してるらしいので)
・なにか小説読みたい!
・なにか科学ネタ的なものを使った小説を読みたい!