漢字的には「山、上、下」と書いて「峠」ですね。この文庫版は上中下巻です。
物語としても序盤で成長して、
中盤で実力を発揮し出世して、
終盤では時代の流れに押し流されまいとしながら、
ぐいぐいぐいぐい流されていく。
ロックすぎる人生でございます。
でもしっくり来る音楽も見当たらないような人。
石みたいに転がりますが、根が無いわけでもなく、
成り上がるものの、成り上がったうまみをすするわけでもなし。
どんな本でしょうか?
幕末の越後長岡藩生まれのある人の一生を綴った小説。
派手に勉強して、派手に遊んで、派手に仕事して、派手に戦争に突入。
なにかにとり憑かれているんじゃないかってくらい行動力があり、
ストイックで力強い(腕力はあんまりなさそうだけどね)。
なににとり憑かれていたかというと
「陽明学」「長岡藩」「幕末」の3つ。
「陽明学」というのは
某トー◯ツ・イノベーションのセミナーでよく聞く
「知行合一」というのを言った人の学問
「長岡藩」というのはこの人が生まれ育った場所であり、
武士であったわけだからある意味雇い主であり、自分が帰属するもの。
「幕末」は、一時代だけども、時代の空気みたいなもの。
今見ると「なんでそうしちゃうの?」と思うけど、
既存システムがガラガラと音を立てて崩れ落ちる時代。
そうする背景があったんだよな。
物語の序盤で主人公が
「勉強しに江戸まで行ってくる。信濃川の少し先くらい。」
とかなんとか妻に行ってから、雪の三国峠を越えていくのがすごい。
あ、でも、この「越えた峠」は実際には三国峠じゃなくて、
碓氷峠だったりするらしいね。
会ったことになってる福沢諭吉と河井継之助が実際には会ってなかったり、
史実と違う部分もあるらしい。
福沢諭吉と話し込むシーンは見せ場の一つだから入れたのはわかるけど、
なんで碓氷峠じゃなくて三国峠にしたのかは謎だな。
今で言うと新潟県から直接群馬県に入るか、
長野県側から回り込むか、くらいの差がある。
直線距離が近いから三国峠?
どっちにしろ実際歩いて行ったら死ぬほどキツそうだけどね。
スキー場で遭難した後、泊まりつつ旅して東京にたどり着いちゃうくらいすごい。
ふつう死んでるよなー。