先生、冷静、であります。ここまで自分を客観視してるのってすごい。
客観視はしてるものの、感情が文章から感じられるのがたいへん興味深いのです。
自己評価が実はあんまり高くなかったんじゃないだろうか。
どことなくひくつっぽい感じも感じられる。
実に人間らしい。
たとえば
~前略~
ぼくのマンガは、無毒無個性で、余りにも微温的すぎるとよく言われる。
なにか一つ特異な個性に溢れたマンガがヒットすると、かならずそれとひきあいに出されるのがぼくのマンガである。
どこかの本に、ぼくのマンガは教科書みたいなものじゃないかと書いたことがある。
~後略~
っていう一文がある。
特異な個性をうらやましく見てるような気持ちと、
自分の芸風はこれだからこれでいいのだ、
と思ってる部分がいっしょにあるんだよね。
マンガ家として本当にすごい人だったんだと思うんだけど、
批評力というか分析力みたいなものの面でも
本当に優れていたんだね。
どうせおれなんか、と、でもおれってこんなとこすごい、が、
両方出てくるんですよ。神様、人間っぽい。
どういう本ですか?
マンガの書き方から生活の話から実にいろいろな側面で手塚治虫さんを観察できる、
エッセイを集めたもの。
絵、特にアニメーションにしたときに、
顔や関節といった「球」をいくつ作るかによって、
かわいらしくなるか大人っぽくなるか、みたいな考察はほんとさすがっす。
平面に落とし込んでるんだけど、立体で考えてるんだよね。
また、シナリオはすべてまず文章で作ってる話が出てくるんだけど、
一度ストーリーを全部文章にしてからコマ割して、
とか、「マンガを作る才能」で一括りにしてるけど、
脚本家、監督、カメラマン、批評家みたいな才能が全部あった人なんだな―、と思う。
「センス」の一言で片付く話ではなくて、
自分の努力を振り返ることをしっかりして、
その上での努力をすごいレベルで繰り返した人なんだ、と気づきます。
こんな人に読んでほしい本でしたよ
・いわゆる「クリエイターさん」
・いわゆる「クリエイターさんになにか作ってもらう人」
・マンガ読むのが好きな人
・手塚治虫先生の大ファンで、生きてれば弟子入りしたい人
・一流の仕事をした人がどんなふうに仕事をしていたか知りたい人