うさみ本棚

うさみの本棚です。おすすめされた本を読みますので、おすすめ教えてください!

十二人の死にたい子どもたちを読んで。読書感想文。

十二人の死にたい子どもたち (文春文庫)
昔さー、完全自殺マニュアルってあったじゃん。
ほんとに自殺したーい!とかはまったくなくて、興味本位で見ていた。
まあ、自殺したくなる気持ちがわかるような時だってありますよねー。
死ぬほどのことはないけども。


自殺する人ってどんな気持ちなんだろう。
って考える時にさ、
「自殺する人」ってひとくくりにしてる時点でたぶん間違いなんだよね。
一人ひとりに死にたい理由や状況があって、
その結果死を選んでいる。


だから、「どこどこの国は自殺者が多くて云々」とか
「都会では自殺する若者が増えている」みたいな
統計じみた話って個人個人では知ったこっちゃないんだよね。
そんで、安楽死したい人を尊重するかどうか、みたいな話もまだまだ語り尽くされていないテーマなんじゃないかと思うのよ。

どんな本ですか?

タイトルでほぼほぼ表現しきってるんですが、
十二人の死にたい子どもたちの物語です。
比喩でもなんでもなく、十二人の死にたい子どもたちの話。
webサイトがきっかけで廃病院に集まった中学生と高校生が合わせて十二人。


それぞれの事情があって、それぞれなんとか死のうと思ってる。
果たして十二人は無事に死ねるのか!
っていうか死んだら無事じゃないんじゃないか?


集まりにはルールがあって、
全員の意見が一致しない限りは先に進まない。
納得できないものには納得できないって言える。
それぞれ死にたい理由が違うから、お互いに共感できない人もいる。
死にたいのは共通だけど、立場も理由も全然違う。


アクション性はほぼ無し。場所移動も建物内くらい。
会話とヒント程度に見え隠れする心理描写が主体。
十二人全員が主人公と言える。
物語が進むにつれてどんどんそれぞれの個性が見えてくる。


登場人物の描き分けが巧み。
絵が上手な漫画家さんのまんがを見るみたいな楽しさ。
描き分けが雑でもおもしろい人ももちろんいるけども、
文章読んでるだけで顔が思い浮かぶような物語。


この人の本ってマルドゥック・スクランブルだけしか読んでなかったのだけど、
こんなんも書いてるの、すごい。
他のも読んでみたくなるな。
「新世代」って感じするよね。


登場人物の一人がホワイトボードに書き込むシーンがあるのね。
その「ふわっとした状況を明確にしていくシーン」は
マルドゥック・スクランブルのポーカーのシーンを思い出すような描写だった。
状況に輪郭を与えていくみたい。

こんな人におすすめしたい本でした。

・自殺する人の状況や心に興味がある人
・人はなぜ自殺するのか知りたい人
・謎が解けていくのを眺めたい人
・殺人から始まらない推理ものがあっていいと思う人