うさみ本棚

うさみの本棚です。おすすめされた本を読みますので、おすすめ教えてください!

カズオ・イシグロさんの「浮世の画家」を読んで。

浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)

あとがきだかにも書いてあるけど、不思議な世界観なんだよね。
日本っぽいんだけど、日本っぽくない舞台。
戦後っぽいんだけど、戦後っぽくない時代。
家族っぽいんだけど、家族っぽくない人々。


登場人物の心を緻密に緻密に描いていく、
という点に関してはやはりものすごくて、
セリフ以上に登場人物に語らせる。
ドラマとか映画だったらセリフ少ないんだけど
むっちゃくちゃ表情や動きの演技がたいへんな感じ。

どんな本ですか?

戦後しばらく経った頃の日本のどこかの街を舞台に、
画家である老主人公と、その家族や友人、
元友人と言った人々との交流を描く物語。
派手なシーンは特に無く、地味である。


心の動き、勘違い、記憶違い、
みたいなカズオ・イシグロさんの必殺技が連続して出てくるので、
その点ファンは要注意。
ストーリーよりも演技で成り立ってるような、
むしろ演技が主でストーリーが従なようなお話。


後の傑作はこの「演技派な文章」に、
特殊な環境や濃厚なストーリーを加えてできたんだな、
と思います。

どんな人におすすめしたい本ですか?

カズオ・イシグロファン
小津安二郎ファン
・文章、特に物語を書く勉強をしたい人
・主人公が老人のストーリーが大好きな人
 (いるのか?)