あとがきだかにも書いてあるけど、不思議な世界観なんだよね。
日本っぽいんだけど、日本っぽくない舞台。
戦後っぽいんだけど、戦後っぽくない時代。
家族っぽいんだけど、家族っぽくない人々。
登場人物の心を緻密に緻密に描いていく、
という点に関してはやはりものすごくて、
セリフ以上に登場人物に語らせる。
ドラマとか映画だったらセリフ少ないんだけど
むっちゃくちゃ表情や動きの演技がたいへんな感じ。
どんな本ですか?
戦後しばらく経った頃の日本のどこかの街を舞台に、
画家である老主人公と、その家族や友人、
元友人と言った人々との交流を描く物語。
派手なシーンは特に無く、地味である。
心の動き、勘違い、記憶違い、
みたいなカズオ・イシグロさんの必殺技が連続して出てくるので、
その点ファンは要注意。
ストーリーよりも演技で成り立ってるような、
むしろ演技が主でストーリーが従なようなお話。
後の傑作はこの「演技派な文章」に、
特殊な環境や濃厚なストーリーを加えてできたんだな、
と思います。