うさみ本棚

うさみの本棚です。おすすめされた本を読みますので、おすすめ教えてください!

「うちの旦那が甘ちゃんで」を読んで。読書感想文。

うちの旦那が甘ちゃんで (講談社文庫)
時代劇。です。
江戸時代の同心の旦那さんとその奥さんのお話なんだけど、
大部分がほのぼの。
ごくたまに捕物帖的な展開。


水谷豊さん主演の「相棒」という長いことやってるドラマがあるけれども、
あれは時々シリーズ代わりのタイミングで相棒がかわったりする。
ところが、この「うちの旦那が甘ちゃんで」では、相棒が変わらない。
だって相棒っていうか奥さんだし。
むしろ相棒である奥さんが主人公では?と思うほど活躍する。


一瞬「この同心の男が主人公?」と思うんだけど、
ほんとはその人はただの助演男優で、
奥さんが主演女優なんだよね。


頭の回転が早くて、美人で、情報収集の能力にすぐれていて、
おまけに旦那さんの仕事に貢献したいという気持ちが強い。
困った人を放っておけない人情家で、
自分の目に映る世界を愛している。


鬼平犯科帳あたりと同じ時代の話なんですよ。
あっちがハードボイルドだとしたらこっちはスタンリー・ヘイスティングスとかブルームーン探偵社っぽいようなゆるさっぷり。
こちらは花の大江戸八百八町ですが。

どんな本なの?

江戸時代の同心とその連れ合いを主人公にした
時代劇ドラマです。
軽い印象で、だけど時々事件も起こる世界。


捕物的なドタバタはあんまりなくて、
さわやかな印象。
油を使わない揚げ物にサルサソースをかけて食べるくらいサラっといただけるんだけど、
素材の旨味があとからグッと来る感じ。

こんな人に読んでほしい本でした。

・時代劇、飽きた
・恋愛ものとか、飽きた
・夫婦がほのぼのする小説とか読みたい
・怖くもないし不安にもならない本が読みたい


ちなみにお盆に久しぶりに会った母親が「こんなんあるけど、読む?」と貸してくれた本でした。

ずるいえいごを読んで

ずるいえいご (日経ビジネス人文庫)

英語。っていうか語学。
使わないと上手にならないんですよ。どうやら。
当たり前みたいな話だけど、言葉は使わないと上手にならない。
でも、使う言葉がありません!みたいな哲学的な問いに答えてくれる本。


ずるい英語っていうか、すてる英語なんですって。
捨てる英語。
でも、「すてる」ってなんかイメージしにくいから
「ずるい」にしたんだそうです。


なにを捨てるかというと、
英語の勉強のうち8割くらい捨てる。
難しい単語を網羅的に覚えていくのではなく、
わからない言葉は、使える言葉を使って表現しよう。
というもの。


英語ネイティブのこどもは、
ネイティブじゃないけど単語をたくさん知ってるネイティブじゃない人よりも
英語で会話ができる。
知らない単語が出てきても、知ってる単語からなにかしら言い換えできるし、
わからなければ聞き直すから。

どんな本すか

「背脂のゲリラ豪雨や~」を英語で言うとしたら、なんというか、
に対する答えは
「So oily」とか「a lot of oil」でよい、と。
「背脂!?なに!?辞書ひかないと!OK Google!」ではないよ、と。


「ひきこもり」みたいな単語も、
わからなければ使える単語の組み合わせで表現すればいいじゃん。
と教えてくれる本。
そして、そのようなトレーニングのためには、
「一つの日本語を4種類の英文で言い表すトレーニング」をするといいよ、と導いてくれます。


まんが家さんと英語教育者さんが作った本なので、
スルスル進みます。
西原理恵子さんの旅行記みたいなね。

こんな人におすすめです

・英語の勉強がしたいんじゃなくて、英語でコミュニケーションがしたい
・英語を話せる人とともだちになりたいと目論んでいる
・っていうかとりあえず英語圏に引っ越そうと思う
・旅行する時とかに英語ちょっと話せるといいなーと思う
・っていうか日本語でも時々言葉が出てこなくて言い換えが大事だと思い始めている

カズオ・イシグロさんの「浮世の画家」を読んで。

浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)

あとがきだかにも書いてあるけど、不思議な世界観なんだよね。
日本っぽいんだけど、日本っぽくない舞台。
戦後っぽいんだけど、戦後っぽくない時代。
家族っぽいんだけど、家族っぽくない人々。


登場人物の心を緻密に緻密に描いていく、
という点に関してはやはりものすごくて、
セリフ以上に登場人物に語らせる。
ドラマとか映画だったらセリフ少ないんだけど
むっちゃくちゃ表情や動きの演技がたいへんな感じ。

どんな本ですか?

戦後しばらく経った頃の日本のどこかの街を舞台に、
画家である老主人公と、その家族や友人、
元友人と言った人々との交流を描く物語。
派手なシーンは特に無く、地味である。


心の動き、勘違い、記憶違い、
みたいなカズオ・イシグロさんの必殺技が連続して出てくるので、
その点ファンは要注意。
ストーリーよりも演技で成り立ってるような、
むしろ演技が主でストーリーが従なようなお話。


後の傑作はこの「演技派な文章」に、
特殊な環境や濃厚なストーリーを加えてできたんだな、
と思います。

どんな人におすすめしたい本ですか?

カズオ・イシグロファン
小津安二郎ファン
・文章、特に物語を書く勉強をしたい人
・主人公が老人のストーリーが大好きな人
 (いるのか?)

「世界はシステムで動く」を読んで。読書感想文。

世界はシステムで動く ―― いま起きていることの本質をつかむ考え方
なんだか不思議な読後感のある本でした。
正直シビれた。


最初に出てくる引用文がね

工場を取り壊しても、工場を作り出した理屈がそのまま残っているなら、その理屈が別の工場を作り出すだけだ(後略)

出典:ロバート・パーシグ(禅とオートバイ修理技術)
ですよ。
シビれるでしょう。


ここで言う「システム」って「情報システム」だけの話じゃなくて、「システム」のことね。
企業も、惑星も、発電所も、農園も、アリの巣も、お風呂もシステム、エコシステムもシステム。
もちろん情報システム的なシステムもシステムね。


システムかそうじゃないかの見分け方が書いてあったんだけど

A)部分がどれかわかりますか?
B)部分は互いに影響を与えていますか?
C)部分が合わさることで、各部分だけのときとは異なる結果を生み出していますか?
D)その結果(経時的な挙動)は、さまざまな状況下でも持続しますか?

の4つ。
ほら。すごいイイでしょ?


んで、フロー(インプットとアウトプット)とストックに着目する。
お風呂と企業なんて全然別物じゃん!と思うけど、
なかなか共通点があるものなんですよだってどっちもシステムだから。
部分があって、互いに影響していて、合わさることで各部分だけのときと違う結果が出て、さまざまな状況下で持続する。


全てに対してあらかじめ対応がされているシステム(変わらないシステム)は脆弱で、環境の変化に対応できるのが強いシステムだよー、というレジリエンスの話とかは本当に
「おっしゃるとおりでございます。」
っていいたくなる内容。


いろいろな状況に対応できるようになってるのも大事だけど、
想定していない状況が起きても被害が小さくなるようになってる。
というのも大事。みたいな話。

どんな本なの?

システムとは何か、
システムは何がいいのか、
システムはどんな動きをするのか、
システムを良くするためにどこに注目すべきか、
システムを良くする際にはまってしまう落とし穴はなにか。
みたいなことが書いてある尊い本です。


料理本で言うならさしすせそから書いてあって、
なのに慣れてる人にも響くような本。
料理の四面体みたいな本。

こんな人に読んでほしい本でした。

・世界のことわりを知りたい人
・ストックとフロー、という言葉の奥深さを感じる人
・壊れないシステムを作りたい人
・意図しない挙動をするシステムに疲れている人
・「システム」に関わる全ての人

十二人の死にたい子どもたちを読んで。読書感想文。

十二人の死にたい子どもたち (文春文庫)
昔さー、完全自殺マニュアルってあったじゃん。
ほんとに自殺したーい!とかはまったくなくて、興味本位で見ていた。
まあ、自殺したくなる気持ちがわかるような時だってありますよねー。
死ぬほどのことはないけども。


自殺する人ってどんな気持ちなんだろう。
って考える時にさ、
「自殺する人」ってひとくくりにしてる時点でたぶん間違いなんだよね。
一人ひとりに死にたい理由や状況があって、
その結果死を選んでいる。


だから、「どこどこの国は自殺者が多くて云々」とか
「都会では自殺する若者が増えている」みたいな
統計じみた話って個人個人では知ったこっちゃないんだよね。
そんで、安楽死したい人を尊重するかどうか、みたいな話もまだまだ語り尽くされていないテーマなんじゃないかと思うのよ。

どんな本ですか?

タイトルでほぼほぼ表現しきってるんですが、
十二人の死にたい子どもたちの物語です。
比喩でもなんでもなく、十二人の死にたい子どもたちの話。
webサイトがきっかけで廃病院に集まった中学生と高校生が合わせて十二人。


それぞれの事情があって、それぞれなんとか死のうと思ってる。
果たして十二人は無事に死ねるのか!
っていうか死んだら無事じゃないんじゃないか?


集まりにはルールがあって、
全員の意見が一致しない限りは先に進まない。
納得できないものには納得できないって言える。
それぞれ死にたい理由が違うから、お互いに共感できない人もいる。
死にたいのは共通だけど、立場も理由も全然違う。


アクション性はほぼ無し。場所移動も建物内くらい。
会話とヒント程度に見え隠れする心理描写が主体。
十二人全員が主人公と言える。
物語が進むにつれてどんどんそれぞれの個性が見えてくる。


登場人物の描き分けが巧み。
絵が上手な漫画家さんのまんがを見るみたいな楽しさ。
描き分けが雑でもおもしろい人ももちろんいるけども、
文章読んでるだけで顔が思い浮かぶような物語。


この人の本ってマルドゥック・スクランブルだけしか読んでなかったのだけど、
こんなんも書いてるの、すごい。
他のも読んでみたくなるな。
「新世代」って感じするよね。


登場人物の一人がホワイトボードに書き込むシーンがあるのね。
その「ふわっとした状況を明確にしていくシーン」は
マルドゥック・スクランブルのポーカーのシーンを思い出すような描写だった。
状況に輪郭を与えていくみたい。

こんな人におすすめしたい本でした。

・自殺する人の状況や心に興味がある人
・人はなぜ自殺するのか知りたい人
・謎が解けていくのを眺めたい人
・殺人から始まらない推理ものがあっていいと思う人

Teal組織を読んで。読書感想文

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現
うん。ちょっと前になんか流行ってたじゃないっすか。
最近になってやっと読んでみました。
分厚くて、しかも密度も高い本でした。

どんな本なのっていうかどんな組織なの!?

表紙めくってすぐの「人類のパラダイムと組織の発達段階」という、
日本語版の付録を見ると、ざっくりした構成が見えてくる。
最初は組織なんてない、そして小さい組織が生まれ、規模が大きくなりリーダーの重要性が高まる。
そして民主的になり、「王様の命令は絶対!」から徐々に離れていく。


で、ティール組織というのがその後にくる、今の所最も進化した組織で、

変化の激しい時代における生命体型組織

なんだそうです。


各個人が自分の判断で自分を動かし、
全体を最適化させるように動き、
利益だけでなく存在目的を重視する組織。


在宅介護の会社だったら、
ふつうこうトップがいて中間管理職がいてその下に中間管理職がいっぱいいてさらに下に中間管理職がいっぱいいて以下略~いっぱいいて
その下に実際働く人がいたりするじゃないですか。


ティール組織はそうじゃなくて、
7人とか10人とかで現場の人達1チームがあって、
そのチームがいっぱいあるだけ。
トップなんていない。


なにか重大な決定をするときは、
その重大さによって言い出しっぺがみんなの意見を聞いて、
本当にやっていいか判断する。


「えー?そんなのほんとに機能するの?」
と思うんだけど、世界中でそんな組織形態の企業がいくつもある。
しかも、いろんな業種で。


機械的に「あっちが動けばこっちがこう動く」みたいなことじゃなくて、
一個の生命体の細胞のように、それぞれの社員が状況に応じて動くんだよね。
しかも必要な情報を共有しながら動く。
ベースができちゃえば人数が増えても問題なし。
ビジネスモデルも業種も問わず。


何千人参加するネットゲームでさ、
上司の命令を待って実行するのと、
各自が思想に基づいて個別に戦うんじゃ、
個別の方が勝ちそうだもんね。

こんな人におすすめしたい本でした

・「組織」ってものにそもそも興味がある
・「新しい組織」って言われるとちょっと楽しい
踊る大捜査線の映画の「リーダーのいない犯罪者グループ」ってすげーなー、と思ってた
・自分がいる組織とは全く形が違う組織があるらしいことを知りたい

日本人の9割に英語はいらない。を読んで。読書感想文。

日本人の9割に英語はいらない (祥伝社黄金文庫)
このタイトルを見て「釣り?」と思う人は、読書家だと思う。
このタイトルを見て「なんだと!?」と思う人は、正しい英語学習者だと思う。
このタイトルを見て「へー」と思う人も、正しい英語学習者だと思う。
このタイトルを見て何も感じない人は、この本を読んで、英語以外の何を学べばいいか探すといいと思う。


釣りじゃない感じにタイトルをつけ直すとしたら
「日本人の9割にとって英語の学習って優先順位低めだから、
 明確な目的や理由がなければもっと他のことを勉強するといいよ。
 あと、1割のほんとに英語が必要な人はこんな観点で勉強するといいと僕は思うよ。」
みたいな本。


だってさ、英語がペッラペラに話せるとしても、
環境的に使わなかったら意味ないじゃないすか。
言語の勉強そのものはおもしろいけども。


んで、じゃあ英語の勉強しないでいいならなにやれっつーのよ、
というとそこは成毛先生、「本を読め」です。
マイクロソフト日本法人代表で今は書評サイト「HONZ」の代表ですよ。
英語が話せるバカになるなら、英語が話せなくていいから賢くなったほうがいいよ、と。


読むべき本を具体的に書いてくれてるから
英語に関係なくみなさん一度見てみたほうがいいっす。
(本人の本の宣伝はない。そこまでアレじゃないね。)

どんな本なの?

ざーっと書くと
・ほんとに英語必要?
・英語を盲信しすぎちゃだめ
・ほんとの「学問」をしよう
・日本の英語教育がイケてない話
・英語は置いといてこの本を読め!
・それでも英語を勉強したいなら…
みたいな内容が書いてあります。


んで、この本を読め!で2冊連続英語の学習に関する本が出てくるあたり、
ちょちょちょ待っ。
と思うんだけど、これですよ。
玄人なタイトルの付け方。
どんな人が読む本なのか、わかってらっしゃる。

こんな人におすすめしたい本でした

・英語の勉強がしたい
・英語の勉強はしたくないけど勉強はしたい
・教養を身に着けたいが、なにから手をつけたらいいかわからない
・効果的、効率的な英語の勉強法を知りたい
・英語とかどーでもいいけど、ためになりそうな本を読みたい


あ、関係ないけどこの人の
成毛眞マーケティング辻説法」って言う本が
マーケターさんに推せる。
未読のマーケターさんはぜひぜひ。
成毛真のマーケティング辻説法 (日経ビジネス人文庫)