いやいやいやいや、なんですかこの嬉しい感じは。
去年のボブ・ディランに続き、なんてセンスがいいんだノーベル賞選考委員会。
カズオ・イシグロさん。「今まで違うことに毎回挑戦している作家」だと思っていて、
それが評価される、というのが素晴らしい。
好きだッ!
料理の世界で言うなら、
フェラン・アドリアみたいな人だと勝手に思ってるんです。
エル・ブリの料理長だった人。
既存の素材を今までにない組み合わせを使って新しい料理を作ったり、
あるいは、まったく新しい料理法を試してみたりする。
イクラかな?と思って口に入れると、
メロンのジュースを球形にしたものだったり、
(アルギン酸ナトリウム水溶液と炭酸カルシウムを使って液体を球状にする方法を使うそうですよ)
(いや、食べたことないけども)
(なんかカラダに悪いよ説もあるらしいけども)
・予想を裏切る驚きがある
・そしてその驚きが「どっかでみたようなやつ」ではない
・全体を覆う違和感の演出が絶妙
・感情の描写を真面目にやらせたら職人芸的なうまさなのに、
あえてそれを封印して一冊書いたりする。
そんな本を書く人なんですよ。
マーガレット・アトウッドさんとかこの人は
「次世代の作家」感が強いと思っているんですが、
私だけでしょうかー。
わたくしとカズオ・イシグロさんの著書
日の名残り
数年前に
「どうでもイイ本をたくさん読むよりも、誰かがイイって言ってた本を読もう。」と思ってから、
友人やネット上の記事からおすすめ本を集めて読むことをしています。
その中で、
amazonのCEOジェフ・ベゾスさんがおすすめしている
「日の名残り」っていう本があるらしいぜ。
ってことで読んでみたのがはじまりでした。
ジェフ・ベゾスがおすすめだという「日の名残り」を読んでみた - うさみ本棚
これ、
「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」
という本の巻末にあった
「従業員や役員に読ませたい本」の
リストを誰かがネットにあげてたようです
(元は読んでないのでそのうち読む)
とにかく印象的だったのが、
主人公の感情の移り変わり。
1920年代の風景が見えるような描写も素晴らしいんだけど、
風景以上に感情の描写。
ちょっと前に
「人間の感情が27種類だと特定された」みたいな記事があったけど、
("Researchers Pinpoint 27 States of Emotion(英語記事)")
これを知ってたんじゃないかっていうくらい、
一言では言い表せない感情がいろいろでてくる。
くどくど書いてないのに伝わる。
わたしを離さないで
次に読んだのが「わたしを離さないで」
カズオ・イシグロ著、私を離さないでを読んで。読書感想文。 - うさみ本棚
ドラマ化されたり映画化されたりしたので、
タイトル知ってる人も多いと思う。
これも設定の突飛さもイイんだけど、
心の動きの表し方も素晴らしかった。
一つ一つの対話が、
「これ、映像にしたら伝わらなくなるぞ…」
って思わせるような細かい描写。
ゆっくりゆっくり感情移入させて、
事実を突きつけてドン底に落とすストーリー。
残酷で、かつ「正義とは」という問題に向き合うような話だった。
人間の繊細さと強さ。
忘れられた巨人
カズオ・イシグロ著、忘れられた巨人。読書感想文。 - うさみ本棚
これもおっもしろかった。
スッゲーの。
上2作は
「そんな気持ちをそんな表現で書きます!?」
っていう内容なんだけど、
この本ではばっさり内面的な感情の表現を減らしてきます。
チャレンジャーですよ。
飛車角落ちもいいところ。
「幾つかの言葉を意図的に使わないことでリアリティを増した」
みたいなこともしてるらしい。
でも、でもオモシロイ。
好きだッ!
この本を言い表すうまい例えが見つからない。
12世紀からあるような素材なのに、
新しい調理法で新しい盛り付けで、
料理なのかすら怪しいものを仕上げてくる。
いや、小説だから料理じゃないんだけど。たとえねたとえ。
まあ、なにが言いたいかというと、
受賞云々にはあまり関係なく、
好きな小説家だな、ってことです。
書店等にもこれを機に平置きされたりすると思うので、
みんな読もうね!!